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IF  ―幽鬼丸 ゲットだぜ!!―

 

 

 もしも、あの時こうだったらば…

 もし、こうしたならば… 未来は変わっていたのかもしれない。

 人生とは、後悔の繰り返し。

それでも、自分を納得させて前に進んでいく、人間とは酷く鈍感な生き物でもある。

 

 

 

 ナルトは右手にしっかりと握った小さな手の主をじっと見つめる。ナルトの視線に気が付いた彼も、にっこりと笑顔を返してくれた。

「もうすぐ、木の葉につくってばよ?」

 彼…幽鬼丸はこくりと頷いた。

「楽しみだなぁ…」

「木の葉はめちゃくちゃいいとこだってば。一番のお勧めは一楽のラーメンかな?」

「ううん、楽しみなのはね。…僕にお父さんが出来る事なんだ」

 二人で微笑ましく笑顔を交わす姿を、少し離れた所からサクラが暗い眼差しで見つめていた。その隣を歩いていたサイは「どうしたの?」と彼女に水を向ける。

「……時々、あいつの考えてる事がわかんなくなるのよ。私…」

「うん、でもナルトが幸せそうだし…いいんじゃない?」

「だ―――――っ!サイ、あんたのそのナルト至上主義みたいな考えどうにかなんないの?」

「サクラ、しょせんは他人事だから、ね?」

 作り笑いでないサイの笑顔を見たサクラは、がっくりと肩を落とした。

 三尾を封印することに失敗した御一行は、ゆっくりと木の葉への帰路を辿っていたのである。

 

 

 

 

 木の葉に入ったナルトの前に、シカマルの姿が見える。

ナルトは心の中で叫ぶ。「運命の神様サンキュだってばよ!」

うきうきしながら、幽鬼丸を引き連れて彼の前に立ったナルトはシカマルの訝しげな眼差しを無視して、幽鬼丸の背を押した。

「幽鬼丸、この人がシカマル。お前のかっこいい父ちゃんだってばよ!」

 シカマルはじいっと、ナルトと幽鬼丸を交互に見た。久々に見たナルトは子連れで、しかも機嫌が恐ろしくいいと来ている。今、自分の鼓膜を疑った。何と言っただろうか?この破天荒な恋人は。

「…ナルト、色々大変だったみたいだな」

 だから、きれいにナルトの言葉をスル―する事に決めたのだが……。ナルトはシカマルの返事に納得しなかったみたいだ。むすりとした顔でシカマルを見上げる。

「シカマル!聞いてなかったのかってばよ。こいつは幽鬼丸。オレの子供にする事に決めたから」

「へぇ…そっか。お前にもとうとう子供が……」

「そうなんだって!オレが幽鬼丸の母ちゃんになるから、すなわちシカマルは父ちゃんな!オレの子供じゃなくて二人の子供だってばよ?」

 ナルトの満面の笑顔をみたシカマルは、一瞬眩暈を感じた。とりあえず、何から先に手をつけるのがいいのだろうか。自分の後ろに居る小隊の部下たちを振り返る。

「今日は、これで解散。綱手様への報告は俺が行くから…」

「シカマル!」

「おって次回の任務については知らせを待つように」

「シカマルってば!オレの話を聞けってばよ」

 引きつり笑いを浮かべた後輩の背を見送った所で、シカマルはくるりと振り返る。そして、もう一度ナルトと幽鬼丸の顔を見る。シカマルと視線が合った幽鬼丸は、にっこりと人の良い笑みを浮かべる。好感が持てるその笑顔にシカマルも口元に笑みを乗せた。小さな頭をぐりぐりと撫ぜてやった。

「ナルト、俺は五代目のとこに報告に行くから、またな」

「ちょちょ、ちょっと待ってって!オレも綱手のばあちゃんに幽鬼丸の事報告しに行くし、一緒に行くってばよ!」

 シカマルの時間が一瞬止まる。どうにもこうにも逃げられないらしい。がしりと腕を掴んでいるナルトの鼻息が荒い。

「ナルト!待ちなさい。幽鬼丸は一度木の葉病院へ連れて行くわよ」

「サクラちゃん…?」

「あんたみたいな体力バカと一緒にしちゃだめって事ね〜」

「いのまで…」

 幽鬼丸の肩を抱いたサクラといのを見る。彼女たちは医療忍者だ。大蛇丸とカブトに滅茶苦茶にされた幽鬼丸の身体が心配ではないかと言われると、頷くしかない。項垂れるナルトにシカマルはふっと笑った。

「ナルト、お前も一緒に行ってやれよ」

 その科白にナルトは大仰に首を振った。

「幽鬼丸にはサクラちゃんが付いてるから、大丈夫だってば!オレは綱手のばあちゃんに話付けねえといけねえし。な?シカマル…」

 最後に自分に丸投げされたように感じるのは、シカマルの考えすぎなのだろうか。その時、はっと自分を取り囲む仲間の顔が目に入る。

「お、おう…」

 チョウジに手を上げたのだが、その口元に憐みの笑みを見つけてしまってシカマルの顔が曇る。その隣ではキバがにししと笑っていた。

 カカシとヤマトは肩をすくめたジェスチャーで、シカマルに何かを伝えようとしているような気がする。

そのシカマルの背すじに、つうっと冷たい汗が伝う。何をどこから整理すればいいのか迷っている所で、目の前に一期上の、リーが現れた。彼はがしっとシカマルの両手を掴むと、ぶんぶんふる勢いで握手をしてくる。

「シカマルくん!良かったですね…ナルトくんも満足しているようですし。僕も未熟ながら、協力するのでなんでも言ってくださいね!」

「…協力?」

 とてつもなく嫌な響きに聞こえてしまうのは何故だろうか。シカマルは乾いた笑みを返した。

 

 

 カカシ、ヤマトから報告を受けた綱手は、うんと頷いた。シズネからの連絡もあり、小隊が撤収した後には暗部の者を湖に配置している。後は、そこからの報告を待つのみだ。

「……ところで、ナルトどうしたんだ?」

 シカマルの腕をがっちりと掴んだナルトに視線を向けた綱手は、シカマルの渋い表情を見て首を傾げた。

「俺は任務の報告書を……」

 カカシたちの間から、シカマルは綱手に任務の報告書を差し出す。

「ああ、ご苦労だったな。シカマル……それで、ナルトは?」

 ナルトはにかっと笑うと、シカマルを掴む腕に力を込める。

「だから、カカシ先生の話にもあった幽鬼丸のことだけど!」

「今は木の葉病院で治療を受けているのだろう?」

 ヤマトのくすりと笑った気配にシカマルはうんざりした視線を向けた。

「オレの子供にしようと思って」

 ナルトの言葉に、その場がシンと静まり返る。それを破ったのは、呆れた様な綱手の声だ。

「…お前の、だと?」

「うん。なんか問題あるってば?」

「問題は…」

「ないってばよ!ついでに言うと、シカマルに父ちゃんになってもらおうと思ってんだってば。ってかこれは決定してんだけど」

 ナルトの機嫌はとてもいい。にこにこと笑顔を浮かべて、シカマルの腕をがっちりと抱きこんでいた。

「シズネ、ナルトに養子縁組について説明してやってくれ」

「綱手様?!」

 シズネの驚いた声は、その場に居るシカマルと同じ心情である。

「こいつが言い出したら、テコでも動かないのは分かってるだろう?」

「え?あの…でも、今回の場合はそういう状況では……」

「だから、詳しく説明してやれと言っているんだが?」

 色々とある手続きの説明をすれば、面倒になってバカな考えもかわるかもしれない。そう言いたいのだ。幽鬼丸の事をひどくナルトが可愛がっているのはシズネからも報告を受けている。その少年が、大蛇丸に利用され傷ついた事も。そんな少年の事を放り出せない性格は、ナルトならではである。

 退室するカカシやヤマトについて行こうとするシカマルを、ナルトが止めた。

「どこ行くんだってばよ」

「俺は……帰る」

「なにいってんだよ?!幽鬼丸はオレの子供になるんだってばよ?シカマルにとっても大事なことじゃねえの?」

 じいっとナルトに見つめられたシカマルはがくりと肩を落とした。

 話は簡単である。簡単すぎて、考えたくない。幽鬼丸という少年をナルトの子供として迎えると言うもの。ナルト自身は幽鬼丸の母親役を買ってでるつもりらしい。

そして……

「裁判所に行って養子縁組の為の手続きをね…聞いてる?ナルトくん」

 シズネの言葉にナルトは、うんと頷く。

「聞いてんけど、ちっとも分かんねえし。こんな面倒臭い事しなきゃいけねえの?」

「当たり前でしょ!簡単に子供にします…じゃ済まないの」

「ん〜じゃ、難しい話はシカマルにしてくれってばよ。シカマルが父ちゃんだから」

 シズネの視線が、ナルトの隣でぼうっと窓の外を見ているシカマルに向けられる。

「シカマルくん……ナルトくんはこう言ってるけど?」

 そして……自分は幽鬼丸の父親になるらしい。ナルトの中では。

「あ?ああ…聞いてますよ、はい」

「シズネの姉ちゃん。シカマルはぼうっとしててやる気なさそうに見えるけど、やるときゃやる男だから大丈夫だってばよ!それに、オレより頭いいからさ」

 シカマルは、ふうっと溜息をつくと腹を決めた。いつまでも現実逃避してはいられない。

「ンで?もっかい、説明……お願いできますか?」

 ようやく自分の方を向いたシカマルにシズネはくすりと笑った。確かにナルト一人ならば、匙を投げていた一件かもしれない。だけれど、彼の隣には奈良シカマルという男が付いている。

 今回ばかりは綱手の杞憂は現実のものとなりそうである。

 

 

 

 夕暮れの木の葉の景色が好きだ。

 茜色に染まった空に、里中がオレンジ色に染まって行く。

 シカマルはナルトの手を握りながら、てくてくと歩いている。手にはいくつもの書類の束。

「な〜…シカマル」

「ンだ?」

「もしかして、怒ってるとか?」

「ンで?」

「あんま、喋らねえから」

 ナルトの殊勝な声に、シカマルはくすりと笑った。

「怒ってなんかねえよ。ちょい、驚いたつうか…ま、そんなとこ」

「オレの事…好き?」

「当たり前の事、聞いてんじゃねえよ。バカナルト」

 絡めた手に力を込める。ぎゅっとシカマルの手を握って、ナルトは口元に笑みを浮かべた。シカマルは思い出したように、立ち止まる。

「シカマル…?」

「ちょっと寄り道、してもいいか?」

「うん」

 シカマルはアスマの墓前の前に立ち、煙草に火を点けると墓石の上に置いた。

「アスマ…とうとう、俺も人の親になるみてえだぜ?」

 呟くようなシカマルの科白をナルトはじっと聞いている。そして、膝を折ると両手を合わせた。

「アスマ先生、オレがシカマルの事幸せにすっから天国で安心して見ててくれってばよ」

「気の早えー話」

 ナルトはふふっと笑った。それから、どかりと芝生の上に座る。

「幽鬼丸には、思っててくれる人の居る場所が帰る場所だって教えた。オレの帰ってくる場所はシカマルのとこだからさ……これしか思いつかなかったんだってばよ」

 静かなナルトの声を聞いたシカマルは、パッケージの中から新しい煙草を取り出す。

「しゃーねえ。お前の子供になるんだから、俺の子供でもあるからな」

「…うん」

 優しい言葉に心の中がくすぐったい。ナルトはシカマルを見上げる。夕日に映えるその顔に愛しさを感じる。

「明日から忙しいなぁ…一連の手続きの事もあるしよ」

「それはシカマルにお任せだってばよ!」

 両手を合わせて、お願いのポーズ。それを見たシカマルは眉を上げるとくすりと笑った。

「ハナっから、おめえに期待はしてねえよ」

「お見通しだってばね?」

 

 太陽が沈む。

 茜色が夕闇と交る瞬間。この時間が、意味もなく好きだ。

「ま、お前は俺の嫁になるってことは決まってた事だから安心しろってな」

「へ?」

 

 

 数日後、幽鬼丸ははれてナルトとの養子縁組を済ませ、彼の子供となったのである。

 もちろん、骨を折ったのはシカマルだったのだが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイトのキリ番10001をゲットした都坂さまのリクエストです。

内容的には「三尾〜の章の、違った未来編」って事で。

うん、書いてたら話が大きくなりまして()

1回じゃ終わりそうにないです。RUIの妄想の泉は溢れかえっている。

その他にある、「Reportの続きっぽく?なる予定。

これは、のんびりまったり続けていきますので。

次回があるのだ!!!すごい、妄想()

都坂さまから頂いたリク内容は、詳しいものだったのですが(^^

いつも台無しにしてんだよね、私が!