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Gravitation
肌寒くなってきた今日この頃。 ナルトは太陽が沈んだ山の端を見つめる。そこには、言葉では形容できない美しい色があった。雲が南北にすうっといくつもの筋を作っていて、茜色と雲の白と、夕闇の紫とが混ざり合った不思議な自然の色。 「きれいだってばよ」 こんなにきれいな夕日なのに、自分が一人な事が悔しい。隣に誰かいて、一緒にきれいだと思えたらどんなに良かっただろうか。ナルトはふと考えて、ぽっと頬を染めた。それから恥ずかしくなって、右に左にきょろきょろと辺りを見渡す。 一緒に居たいのは“誰か”じゃなくてシカマルなのだと頭に浮かんだ瞬間、誰かにこの心を読まれているんじゃないかと急に恥ずかしくなってしまった。盲目ににシカマルの事を考えてしまう時がある。そんな自分の思考回路から、本当に彼の事が好きなんだなとか勝手に納得してしまったりして、また恥ずかしくなるのだ。 「ホント……オレって、バカ」 今日はヨシノとの約束の十三夜の月見の夜。偶然なのか明日が休みなので、泊まっていくという約束も果たせそうである。着替えの入った小さな荷物と、一応土産のお菓子。きっと、気を遣わなくていいと言われるだろうが気持ちの問題である。ヨシノの作ってくれる食事はおいしいし、ナルトが訪問すると当たり前のように風呂などが用意されている。いつだか、家族の一人だと思われていると言われ心の底から嬉しかった。様々な人との出会いやつながりで得たものは多い。もちろんシカマルもその一人で、彼の与えてくれるものは自分の人生に大きな影響を与えている。 人を好きになる事、大切に思う事。たまにはちっぽけな嫉妬心を覚える事。プラスばかりの感情ばかりでないけれど、全てが彼を好きだと思う感情の一端。 呼出しのベルを押す。今でもこの瞬間はなんだか照れくさい。ドアが開いて、ヨシノの笑顔がナルトを迎えてくれた。 「いらっしゃい、ナルトくん」 「お邪魔しますだってばよ。 あと、これ…お土産ってか、大したもんじゃねんだけど」 ナルトがビニル袋を差し出す。 「いつも気を遣わなくていいって言ってるでしょ?」 「でも、やっぱりオレの気持ちだし。いっつもおばちゃんにはありがたいって思ってんだってばよ!」 ナルトから包みを受け取ったヨシノは、それでも嬉しそうに笑う。お月見だと言われていたし、どうしようか迷って甘栗甘へ向かい季節のお菓子だとすすめられた栗きんとんを買ってみた。さすがに団子はヨシノが用意するものに被ってしまうかもしれない。 「ありがとう。さあ、中に入って」 温かく迎えられる事に笑みが零れる。時々、本当に自分がこの空間に居てもいいのかと思う事もあった。それでも、シカマルの友人だからと言う理由でなく、ヨシノやシカクが自分を受け入れてくれるから自然と心が解けて行ったのだ。シカマルの両親だからというのは度外視しても、初めて触れる家庭の雰囲気にナルト自身も心地よくなってしまう。 「へへっ…お邪魔します」 ちゃんと脱いだサンダルを揃える。ヨシノの背中を追ってリビングに入ると、寛いでいるシカマルの姿があった。 「よう、お疲れさん」 「……あ、うん。シカマルは、」 「昼には戻ったぜ?」 任務で里を留守にしていた事は知っている。数日前、もしかしたら“月見”に間に合わないかもしれないと渋い顔つきでやってきたのは、夜だった。冷たい雨が降っていて、湿気を含んだ彼のベストに顔を押し付けた後は恥ずかしくて思い出したくない。 「顔、赤けぇぞ?」 「う…嘘だってばよ!」 心の中を見透かされているようでナルトは慌てる。その姿を見てシカマルは盛大に吹き出した。 「冗談だっての」 「信じらんねえっ!!」 膨れながらもシカマルの隣に座る。ぎろっと彼を睨みつけて、顔を背けた。 「おいおい、冗談って言ってんだろ?」 「知らねえしっ」 「めんどくせーなぁ。 拗ねんなよ」 ぷうっと膨れるナルトの前に、湯呑が置かれる。これはシカクとヨシノの計らいで誂えてもらったナルト専用の湯呑である。そして、栗きんとんの乗った皿。 「ナルトくんからのお土産よ?」 「うまそうじゃねえか」 渋い緑茶に合いそうな甘い栗の味を思い出して、ひょいっとそれをつまんで口に入れた。一口で咀嚼しようとしたが、どうしても口の中がもさつく。すでに温くなってしまった茶を口にして、まだぶうたれているナルトにふっと笑ってしまった。 ナルトが自分の顔を見て驚いた理由は分かっている。 シカマルが今日― 十月九日 ―に里への帰還が間に合わないかもしれないと告げたのは本当だ。気が進まなくても、両親がナルトを愛でるだろうし仕事柄自分の意思だけではどうしようもない事だってある。それは、ナルトとて同じことだ。だから、それを告げ寂しいと言葉にはしないナルトが抱きついてきた仄暗い夜が忘れられない。別に、絶対の約束はしていない。それでも、心の隅っこの方で一緒に居られるんじゃないかと、わずかに期待している気持ちもあった。きっとそれはお互いに。 だから、熱くなった心だけでお互いを求めあった夜。 冷たい雨に降られて冷えた身体をナルトの体温で温められた夜。 「なぁ、ナルト」 「なんだってばよっ!」 「………俺も同じだって。 お前と、同じ気持ち」 別に言い訳をする訳でも弁解するわけでもない。ナルトが数日前の夜を思い出している事が手に取るように分かったから、嬉しくなってついついからかってしまったのだ。好きだから苛めたいなんて感情があるなんて知らなかった。子供っぽいようなそれに、たまに悪戯心を刺激されナルトの逆鱗に触れる事もしばしばなのだけれど。 例えば、今とか。 ヨシノに見えない角度で、ナルトの指を自分の指に絡め取る。 「今はホントに顔、赤くなってるぜ?」 「…う、うるさいってばよ」 そっぽを向きながらもシカマルの指に、ナルトの意思で指を絡め返してくれた。照れたような頬に、口元には笑み。二人だけがつながっている感覚に心が温まる。気持ちを伝えたくて触れてみただけなのに、すでにこの指を離したくないと思っている自分がいた。どこまでも貪欲で、どこまでも強欲で自己本位。自分を蔑む言葉の羅列が頭の中をくるくる回り、しょうがなくナルトの手を離した。名残惜しいのはナルトも同じなのか、ちろっと横目でシカマルを伺ってくる。 「お前も、食えよ。栗、うめえな」 「シカマルって甘いのあんま好きじゃねえくせに」 「食わねえ訳じゃねえって。素材本来の甘味はけっこー好きだぜ」 「そうなんだ?」 何に納得したのか満面の笑顔になったナルトが熱い茶をすすりながら、栗きんとんを口に入れた。この時期しか食べられないとう限定感があるのか、特別に美味しいと感じてしまう。栗の甘味が口の中に広がりそれが香り豊かな緑茶とよく合っていた。 「うまい」 へへっと嬉しそうに笑うナルトのリラックスしたような笑みにシカマルも気分が和らいでくる。長期の任務後は自分で気にしているよりも、ずっと緊張感が抜けない事がある。オンとオフは上手く切り替えられる性格だと思っていたのだが、そうでもないらしい。隊のリーダーとして仲間の命を預かる立場になって少しは性分も変わっているのだろうか。だけれど、ナルトと触れ合うと一気に素の自分に戻れるような気がするのだ。彼の存在が自分の中で良い意味で自然になっている。 生と死が何であるのか、それが自分にどのように関係しているのか……そんな事を曖昧にでも感じるようになってから、自然体であるという事がどれだけ難しいのかと思い知らされた。成長したのだと一言で済ませてしまえないような焦燥感を拭い去ってくれるのがナルトで、大袈裟でなくシカマルの中で彼が稀有な存在になっている。 何かに対してこんなに興味を持って、求めてしまうなんてナルトを好きになるまでは知らなかった感情だ。元々、雲のように流れるように生きていけばいいと思っていた口である。自分の意思で自ら行動できるようになったのは、生きる事やナルトへの執着なのだと思えた。 「風呂、入ってこいよ」 「シカマルは?」 きょとんと首を傾げたナルトに、シカマルはくすりと笑う。 「帰ってからすぐに入った。土埃まみれでよ……風呂にもゆっくり浸かりたかったしな」 「……じゃ、入ってこようかな」 「ナルトくん、少し待っててね。お湯加減見てこないと」 ナルトの言葉を聞いたヨシノが慌てて台所を出ていく。その後ろ姿を見て、二人でぷっと吹き出した。母親の足音が遠のくのを聞いて、シカマルがナルトの肩を抱く。そして覗き込むようにしてから、ナルトにキスを落とした。 「シカマ…」 「本当は最初にこうしたかった」 「ん…」 瞼を閉じて、触れた唇が熱くなるのを感じる。啄むみたいに口づけられて、ナルトがうっとりしているとシカマルがぺろりと唇の端を舐めた。 「子供じゃねえんだから。ついてるぞ、栗」 「え?マジ…?」 ぱちっと目を開けたナルトは近くにあったシカマルをじっと見つめる。その青い瞳に吸い込まれそうな気分を味わいながら、シカマルが優しい笑みを見せる。 「一緒に風呂に入りてえのは山々なんだけど……――――」 「なんだってばよ?」 「色んな意味で我慢できなくなりそうだから、やめとくわ」 「………――――― う、それは…困る、かも…、しんねえ」 吝かでない気持ちとそうでない気持ちが半分ずつ。本音をさらけ出してしまうには羞恥心が邪魔をする。 「ま、お前今日は泊まってくって事だし?」 シカマルがにんまりと艶っぽく笑った。 「お楽しみは取っておくってことだな」 ナルトは一気に真っ赤になった。シカマルが何を言いたくて、それに期待している自分が居る事を素直に認める。もちろん、心の中でなのだけれど。 「風呂、いくってばよ…」 ぎくしゃくと立ち上がって、なるべくシカマルから視線を外した。 「ゆっくりして来いよ、ま…それ以上茹蛸にならねえようにな」 「もうっ! うるさいってばよ」 バタバタと行く後ろ姿を見送ったシカマルは、楽しそうに肩で笑った。
ナルトが風呂から上がると、リビングにはシカマルとシカクの姿がある。 「おっちゃんっ! おかえりだってばよ〜…っと、お邪魔してるってば」 半渇きの髪がふわふわと揺れる。その金糸と明るい声を聞いたシカクはにやりと笑った。 「おお、ナルト。元気か?」 「元気だってばよ」 「ナル坊におかえりとか言われると嬉しいな」 「先に風呂使わせてもらったってば」 「気にすんな」 へへっと笑ったナルトは珍しく自室でなくリビングに居るシカマルに首を傾げた。夕飯が出来るまでは部屋にこもっているのではないかと思っていたのだ。ナルトも何の気なしに風呂場からリビングに自然と足を向けたのだけれど。 「ナルトくん、ちょっと手伝ってくれない?」 「へっ?! オレ…?」 ヨシノの手伝いが出来るとは到底思えないのだが、呼ばれて台所へ向かった。シカマルは少し難しそうな顔をしながら、シカクの前に座っている。特に会話がないのがこの親子で、それがなんとなく羨ましく思えてしまう。以前それをシカマルに告げたら仏頂面されてしまった。言葉を交わさなくてもお互いに理解し合えるなんてすごいと思うのだけれど、シカマルは真っ向からソレを否定してきたのだ。その態度も信頼関係があるからこそ成り立つ関係だと思うのだが、彼的にはそうは思わないらしい。 含み笑いをしてヨシノの元へ行くと、彼女が白い物体をボウルの中に移しているところだった。湯気のたつそれはとても熱そうだ。 「おばちゃん、これ…なんだってばよ?」 「なんだと思う? ナルトくん、熱いから直接触っちゃだめよ、はい」 ナルトは木の棒を渡されて、ますます意味が分からなくなった。 「そのすりこ木で、ボウルの中のものをよくこねて掻き混ぜてね」 「…う、うん」 ふんわりと漂う香りにナルトは、あっと声を上げた。 「もしかしなくても、これって…団子?」 「そうよ、お月見団子」 ふふっと笑うヨシノの元へシカクがやってくると、口の端を上げる。 「母ちゃんの団子なんて何年ぶりだ? 上手そうだな」 ナルトも感心しながら、渡されたすりこ木で団子の元をぐるぐると混ぜる。意外と力のいる作業で、多少はコツもいるみたいだ。だんだんと粘りが出てくるから、すりこ木に引っ付いて上手に掻き混ぜられない。 「すごいってばよ」 感心しながら作業を続けていると、シカマルも顔をひょこっと出した。あまり興味は持っていないような顔つきで、それでも覗き込んでくる。 「シカマル、すごいって。月見団子だって!」 思わずはしゃいでしまうと、シカマルがふっと笑みを見せた。 「火傷すんなよ?」 「しねえってばよ」 粗熱が取れたのを確認したヨシノが、うんうんと頷きながら椅子に腰かけた。ナルトもそれに倣う。 「こうやってね、水を少しつけて……」 ヨシノは小さく餅をちぎると手のひらでくるくると丸める。 「ほら、できあがり」 「すげ〜〜っ!!」 素直に感動したナルトもヨシノのやったように団子を丸めてみるのだが、上手くいかない。丸くするのが意外と難しい。ヨシノがやっていると、とても簡単に見えたのに実際やってみると手のひらの団子は歪な形になっていた。 「…む、難しいってばよ。おばちゃん、どうやったら丸くなる?」 「余分な力は入れないで、手を擦り合わせるみたいに円を描いて丸めてみて?」 「うん」 ナルトは真剣な顔つきで、団子を丸める作業に没頭している。その隣にシカマルやシカクがいるのだがお構いなしだ。目の前の団子づくりに夢中である。 「母ちゃん、気にしてたんだな」 シカマルの一言にシカクもぷっと笑う。何のことだが分からないナルトは手の動きを止めないままヨシノに視線を移した。 「何を気にしてんだってばよ」 「十五夜の時の団子。ナルトは母ちゃんに手作りかって聞いただろ?」 「聞いたけど……」 「だから、今回は手作りにしたんじゃねえの」 シカクは腕を組みながら「全部、お前のせいだ」とシカマルを呆れた風に見た。 「俺?」 「お前がまだ小さい頃、母ちゃんはお前と一緒に月見団子を作ろうとしたのに……お前がつまらないとか興味がないとか言うから買ってくるようになったんだろうが」 シカクに言われてシカマルは眉を顰めた。彼の頭の中にしっかりと記憶が残ってるに違いない。 「そうよ、めんどくさいとか言いながらちっとも乗り気じゃなくて」 可愛げのない子供だった覚えは痛いほどある。それも掃いて捨てるほど。シカマルは嫌な風向きにげんなりとしてしまった。手のかからない子供だったけれど、両親はそれなりに手を掛けようとしてくれていた……という過去は存在するのだ。 「悪かったな、可愛くなくて」 「可愛くねえな、全くよぉ」 「アンタの息子だろうが……」 呆れて返したシカマルに、シカクは肩を竦めただけ。 「そうね、お父さんの影響もあるわねぇ」 「……影響だ?」 ヨシノはじっとりと夫を見つめた。 「そうでしょう?まだ月にはうさぎがいるって信じてもいいくらいの年頃の子供に、そんなものは存在する訳ないって言ってたじゃない」 シカクにもその覚えがあるらしく、口を噤んでしまう。月にウサギが居る訳ねえだろ、バカヤローとか言って「月の本」を渡したのは父親なのだ。それを読破してしまった息子は、母親の甘い期待を裏切り「あれはクレーターって言うんだぜ、母ちゃん知らねえわけねえよな?」とか冷静に月にウサギが住んでいる説を否定した。 「ウサギはいねえから、餅つきなんてしねえって……言ったな。確かに」 苦笑いをするシカマルの前で黙々と作業を続けるヨシノは、横目でシカクを伺う。 「悪りぃ悪りぃ、母ちゃん。 ま、いいじゃねえか。今はナル坊と一緒に団子作ってんだから。ナル坊の事だから、ウサギが餅つきしてると信じてたクチだ、なあナルト!」 水を向けられたナルトは、ぎくりと反応して眉を寄せた。その隣では必死に笑いを堪えているシカマルが居る。ナルトはぷうっと頬を膨らませた。 「シカマルっ!笑うとか、オレに失礼とか思わねえの?」 「……十分に我慢してんだろ」 「笑ってるってばよっ!」 そのやり取りを見ていたヨシノとシカクが顔を見合わせた。それに気が付いたナルトの顔がどんどん真っ赤になっていく。 「なんだってんだ?」 「こいつさ……アカデミーの頃くれえはマジで信じてたんだぜ?月にウサギ」 「もうっ!!ばらすなって…!!」 ぎりぎりと歯噛みするナルトがシカマルを睨みつけるのだが、当のシカマルはお構いなしだ。くすくすと笑い始めたヨシノとシカクを見てナルトは思わず俯いてしまった。 「おっちゃん、おばちゃんもっ!ひどいってばよ…」 「馬鹿にしてるとかじゃないのよ?」 「ナル坊らしくていい。バカ息子とは違うな」 「親父、俺を引き合いに出すなよ…」 「褒められてんのかけなされてんのか、微妙だってばよ」 そんな会話の中でも、綺麗な丸と歪な団子が次々と皿の上に盛られていった。その一つをつまむと、シカクがぽいっと口の中に放り込む。 「うめえな…」 「お父さんったら……」 「ま、一緒にまた月見が出来て良かったな、ナル坊」 話の矛先を変えるためか、バツが悪そうな顔をしているナルトに話しかける。 「十五夜に月見をしたのに、十三夜にしねえってのは“片見月”つって縁起が悪いって言われてるんだ。ちゃあんと十五夜のお月さんを見た庭で、また十三夜の月を愛でるってな」 「へえ…」 十五夜の月を見たのは奈良邸の庭である。庭の池に映る望月が美しく、一緒にやった花火が夏の終わりに相応しかった。ナルトの中になかった知識をいつも教えてくれるのは、シカマルだったりヨシノやシカクだったりする。感心するし、自分の中に存在していない日常が増えていくようで嬉しい。いつもそれについては感謝しているのだ。 「じゃ、一緒にまた月が見れて良かったってばよ」 「まあ、親父たちはそれだけじゃねえんだろうけどな〜…」 ぽそりと不満そうに呟いたシカマルに、ナルトもその科白の意味が分かってしまう。ナルトは少し気恥ずかしくなってしまった。 「ちゃんと、ケーキは買ってあるわよ。もちろん、ナルトくんの好きなものもいっぱい作ったし沢山食べてね、ナルトくん」 ナルトはこくこくと頷く。 「せっかく明日はナルトくんの誕生日なんですもの。一緒にお祝いしてもいいでしょ」 最近ではシカマルがあまりナルトを家に連れてこなくなった。二人とも任務のランクも上がり時間がないと言う話も分かるが、やはりヨシノとしては楽しみが減ってしまったようで寂しいのだ。元々、留守がちなシカクと同じでシカマルも家を空けることが多くなっている。子供の成長を嬉しく思う反面なんだか手持ちぶたさな事もある。だからこそ、ヨシノにとってナルトの存在は癒しに近い。ナルトを見ていると微笑ましいと言えばいいのだろうか。シカマルに手がかからなかった分、ナルトを構いたくなってしまう。ナルトという人間を知れば知るほど彼に好感を覚えるのだ。明るいが決して図々しい訳ではない。それどころか、どこかで一線を引くのが身についている子供に。 「めちゃ嬉しいってば、ホントにありがとうだってばよ」 照れたように笑ったナルトにシカマルの機嫌が急降下する。その変化に気が付いたものは誰もいないだろう。すくっと立ち上がると、それを驚いたように見上げたナルトに視線を移した。 「母ちゃんの腕によりをかけた料理ってのも楽しみだな。俺はちょっと部屋に戻ってるから、用意できたら呼んでくれよ」 「え…シカマル?」 「お前も団子終わったら来いよ。前に話してた巻物、見つかったぞ?」 巻物の話をした覚えはなく必死に記憶を探してみて、それがシカマルの作った口実だとぴんときた。汚れた手を布巾で拭うと、ヨシノに視線を移す。ヨシノはにこりと笑って頷いてくれた。 「もうお団子終わるから、いいわよ?」 「あ、じゃ……」 もう後ろ姿が見えない。慌ててキッチンスペースから出ると、長い廊下の曲がり角で後ろからぎゅっと抱きしめられる。真っ暗な中でも、自分を抱きしめているのがシカマルだと分かって胸がドキドキと高鳴った。 「なんだってばよ、いきなり……あんな態度」 「しょうがねえだろ、手前の両親にも嫉妬してんだって」 「なんでだって……」 言葉で、その腕で束縛されるのが嬉しい。心をくすぐるシカマルの言葉に幸せが満ちる。すこし歪んだ感情でシカマルを縛りたくなる。 「シカクのおっちゃんもヨシノのおばちゃんも、シカマルがくれたオレへのプレゼントだってばよ」 彼と言う存在が自分の近くになければ、触れ合う事がなかった。 「シカマルの一部だから、全部好きなんだってばよ?」 「なんだろうな。なんか、叶わねえなって思う瞬間があんだよ。まだまだガキなんだろ?」 「オレはシカマルの事がすげー好きだって」 代わりはいない。誰も自分の中を埋めてくれる代わりはいないのだ。シカマルだけが魔法の言葉を自分にくれる。好きだと、愛していると聞くたびに、抱きしめられるたびに、キスをするたびに、抱き合う毎に深くなっていく感情。人と人の関わりが傷口を抉るものでしかないと思っていた頃、それを救ってくれたのは厳しくも優しい教師の存在だった。そして、いつの間にか自分の周りに出来ていた「和」に、シカマルが必要不可欠だと知ったのだ。 「お前の匂い、……好きだ」 息を吸い込んでナルトの存在を感じる。腕の中の温もりが、愛しい感情を煽る。ナルトは交差されたシカマルの腕にキスを落とした。こんなに、誰かの事を好きだと必要だと思えるようになったのは、シカマルと出会えたから。愛するという本当の意味がまだ分かっていない子供かもしれないけれど、少しだけ…少しずつ二人で核心に近づければいい。 「シカマルがいないと、オレ……すげー寂しい。だから、ぎゅってされるとめちゃ嬉しい」 シカマルが自分に与えてくれるのと同じくらいの愛情を彼に与えられたらいい。人の価値観なんてそれぞれだけれど、それでもどこかで繋がって心が重なって思い合えたら幸せだと、心の底から願った。
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ナルト誕生日おめでとう!
話はFULLMOONから続いてる感じです。
たまたま十三夜がナルの誕生日の前日だったから、こじ付けのようにくっつけた(笑)
シカ誕やナル誕は月見つながり何年も続いてますね(^^ゞ
あーーーっもう、ただ単にラブラブしてろよシカとナル!って感じですが。
どうも奈良家族を入れると長くなります、無駄に…ラブラブシーン少ない。
自分で書いておいてストレスためてました。
次回はもっと、ハピバな雰囲気でシカナル全開で行きたいと思います!!
ナル誕なんで張り切る!!!(感嘆符三つつけてみたぜ)