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divincolarsi
ゆらゆら揺れる。 景色が、意識が、全てが揺れる。 揺れているのはなに? 揺れているのは、僕?
視線。 彼の視線が、僕の中の何かを射抜く。 口元に浮かべた笑みとは対照的に、その瞳は何かを探る様に心の中をえぐり出してくる。
「あ…っ」
思わず漏れた声に、白蘭サンがすごく嬉しそうに笑った……ように見えた。
「正チャン、可愛い」
くすくすと笑う振動だけでも、繋がった部分が刺激される。僕は思わず頭を振った。沖に上がった魚みたいにパクパクと口を開けて、みっともなく酸素を求めている。 張り裂けそうになっている声、なのに、それを漏らすのがすごく悔しくて。でも、そんなバカなプライドを持っている僕を白蘭サンは楽しそうに見つめているだけだ。
「イキたい?」
座ったままの彼。その彼に跨って、その欲望を受け入れているのは僕。 最初から、結果の見えているゲームなんてつまらない。負けると分かっているのに僕は素直になれない。素直になってしまえばいいのに、なれない。なぜならば、僕は白蘭サンの気を引きたいんだ。 もっともっと見つめて居て欲しくて、もっともっと彼と繋がっていたい。そんなみっともない僕の本性をきっと余裕綽々の笑みを浮かべる彼は知っている。知っていて、この状況を楽しんでいる。
「正チャン、すごくかわいくてエロい顔してるから…ボクのが先にいっちゃいそう」
ぺろりと赤い舌が唇を舐める。その仕草が僕の中の欲望に火をつける。
「ずる…ぃ…」 「なにが?」
腰を突き上げるようにしてきた白蘭サンの行為に僕は固まった。奥の一番イイトコロを的確に狙ってくる熱いモノに声が上ずった。
「んっ…はぁ…あ……」 「あ、感じた?」
睨みつけると、また嬉しそうに笑う白蘭サン。 やっぱり、あなたはずるいよ。
「目…潤んでるよ?涙がでるくらい、悦い?」
僕の口からそう言わせたいんだ。白蘭サンに溺れている僕の本性を見抜いておきながら、僕の中のちっぽけなプライドをくしゃりと握りつぶすみたいに…… 悔しい。 好きで好きで堪らないけれど。きっと、こんな気持ちを白蘭サンは知らなくて、自分だけがこの人に溺れている事を見せてしまうのが悔しくて堪らない。 最初から結果の分かっているゲームなんてつまらない……白蘭サンはいつもそう言うのに、僕の身体も心も蹂躙して何がそんなに楽しいんだろう。 不意に、生理的な雫が頬を伝うのを感じた。熱くなっている肌よりも熱い、雫。
「正チャン?」 「あなたは、ずるいんだっ!」 「ん〜?何を逆切れしてんの……気持ち良くない?」
でも、最後の最後にはやっぱり…僕はこの人に叶わない。悔しくてもそれが受け入れるしかない現実。だから、僕は首を横に振る。それに満足したのか白蘭サンが奇麗な笑顔を見せた。
「可愛いね…正チャン」
白蘭サンの白くて細い、それでいて男らしい指が頬に伝った涙を辿る。そんな些細な事にさえ僕は敏感に反応してしまうんだ。
「今日は許してあげるけど、今度はちゃんと口で言ってね? ボクとすると気持ち悦いって…ね?」
スンと鼻をすすりあげた僕の身体を白蘭サンがぐいっと引っ張る。崩れ落ちる様に彼の腕の中にすっぽりとおさまった僕は、下半身に直撃する快楽に眉を潜めた。少し動くだけでもダメなんだ。白蘭サンが僕の中で擦れるだけで、嬌声が漏れそうになる。ふるふると快感の波が去るのを待つ僕の身体を、白蘭サンはぎゅうっと抱きしめた。そして、滑る様な手つきで腰から背中までなぞられる。
「んん…っ…やっ」 「うん、良い声♪」 「あ…やっ…びゃく…サ、ンっ!」 「大丈夫だから、大好きだよ正チャン…」
白蘭サンが囁く言葉は魔法みたいだ。 そう。僕のちっぽけなプライドなんてこの人の前では塵にも満たない。最初から握りつぶすまでの存在でもない。分かってるはずなのに、どうして素直になれないのか……僕は不思議でならないんだ。もう、この人が好きで堪らないって、早々に白旗を上げてるって言うのにね。 ホント、僕ってこんなに情けない奴だったかな?
僕の身体は白蘭サンの両手で拘束されたままなのに…… ゆらゆら、ゆらゆら…―――――― 視界も、意識も揺れる。
「あ…アアア…ンっ……あんっ、あ…っ!」 「正チャン…」
いやいやをするように頭を振る僕の頬を包み込む優しい手の平。身体を突き抜けるような快楽に溺れている僕は必死になって、何かに抗おうとしている。
「ボクを見て…」 「見て…る」 「ほら、ちゃんと見て。気持ち悦いって顔して…」
白蘭サンの熱いモノを飲み込んで居る部分がきゅうっと収縮を始める。細胞の一つ一つが、白蘭サンのくれる悦楽に酔っている。それで、求めている。貪欲に。 ゆっくりと近づいて来る白蘭サンの奇麗な顔。こんな奇麗な顔をしているのに、腹の中は真っ黒だ。そして、僕もその共犯。罪を分かち合うという甘い毒にとっくの昔に侵されているから、離れられない。 上唇を甘噛みしながら口内に入ってくる舌は何時も甘い。歯列をなぞる舌先がすぐに僕の舌に絡められた。
「んん…っ」
促される様な舌の動きに、僕も応える。ひとつのキャンディを二人で舐め合うような、ねっとりと唇を交わす行為が好きだ。深くなっていく唇と一緒に、二人が繋がっている部分も深くなっていくような気がして気持ち悦い。 白蘭サンの片手は僕の後頭部に添えられ、もう片方は腰を支えてくれる。下から強弱をつけて突き上げられる度に、気が狂ってしまうのではないかと思うくらいの快感が脊髄を伝った。
「あっ…ああ、やっ…ンン…白…蘭さ…っ!」 「大好きだよ、正チャン」 「 ――――――――― 僕も…」
好きで好きで好きで、堪らなくて、もうどうしようもない。 どうしようもないんだ…でも。 白蘭サンを好きだと感じる度に、胸の奥を突き刺す様な痛みに襲われる。自分というちっぽけな存在が悲しくなる。白蘭サンから「好きだ」と言われるのが好きだ。それだけで満たされてしまう。この気持ちはきっと一生伝わらない。分かっているのに、そう思う度に胸が苦しくなる。 本当は逃げ出したいのに。それをしないのは、とどのつまり……僕がこの人に骨抜きでどうしようもなくなっているからに違いない。
「一緒にイコうか?」
こくりと頷いた僕に、白蘭サンがまた奇麗な笑みを見せる。こんなに奇麗に笑う彼は本当はとんでもない事を考えている冷酷な人間で。その冷酷な部分も含めて、彼の事が好きなんだと、丸ごと好きなんだと、何度も思い知らされた。きっと、そんな事を考えている僕もかなりひどい人間なんだろう。この気持ちは誰にも責任転換できないから。
突き上げられて、揺れるのは身体だけじゃない。 ふわふわと、ゆるゆるとせり上がってくる欲望の波。 もうすぐで、弾けてしまう。熱が膨れ上がる。
「…ん…っ、あ…っあ、あ、…やっ」
感情が壊れてしまえばいいのに。何もかも考えられなくなるように、粉々に砕けて消えてなくなってしまえばいいのに。それでも、心の中の僕はその反対の事を望んでる。
「…きっ、す、き…… ――――― 白蘭サ…ン……」
背中の筋肉を伝う様に頭を突き抜ける様にせり上がってくる快感が、意識の中で飛ぶ。 真っ白になって震える身体を、白蘭サンが抱き寄せてくれた。この腕が恋しくて堪らない。熱い身体が汗によって冷やされる。息を整える様にしていると、その唇にそっと白蘭サンの唇が重ねられる。
「…な、に?」
ケホンと咳込んだ僕に、白蘭サンがくすりと笑った。
「いっぱい声出ちゃったから枯れてるね。すごい、色っぽい感じ」
僕はかあっと頬が熱くなる感覚に襲われる。目を大きくして僕を見た白蘭サンはひどく楽しそうだ。
「あらら、正チャン…照れちゃって可愛いねぇ。飲みもの、取ってこようか?」
本当の事を言われて恥ずかしがっている僕は一体何者だろう?この人の手にかかれば、どんな人も子供みたいになっちゃうのかな。力が入らなくてくたりとなった僕の身体から白蘭サンが出て行く。その刺激に後腔がきゅと反応した。そんな僕の反応に白蘭サンはふっと笑い、汗ばんだ髪をすく指が目尻を掠めた。
「いっぱい、鳴かせちゃったな♪」
ひらりとベッドから降りて行く白蘭サンの後ろ姿をぼうっと見つめた僕は、無意識に溜息をついた。 きっと、遠くない未来……僕は、この人を裏切る事になる。それは決まっている事で、自分で決めた事で、自分で選んだ道で、自分が原因で大好きな人を変えてしまった僕の贖罪。もう、終わりは見えているのに……僕の気持ちは揺れている。白蘭サンを裏切ることにじゃない。 意識の奥深くに仕舞いこんだ感情に悲壮感を感じている僕の前に、ペットボトルの水が差し出された。当たり前の様に受け取って、それを一口飲む。枯れていた喉に冷たい液体が気持ち良い。 そして、白蘭サンの持っているもう一つの物に僕は目が点になる。
「まだ…食べるんですか?」
スクエア型の皿の上には、小さな丸いケーキが乗っている。 その上にはチョコレートで作られた小さな薔薇の花。
「まだって、今日はまだ食べてないよ。ケーキ」 「夕食の時に杏仁豆腐、…おかわりしてましたよね?」 「ん〜?ああ、おいしかったよね。四川料理も。正チャンは辛いのダメだったみたいだけど」 「辛かったけど、おいしかったですよ?」
元々胃痛はストレス性だ。もちろん、そのストレスの殆どの原因が白蘭サンなんだけど。ものすごく辛かったけれど、白蘭サンが連れて行ったくれた四川料理の店はとても美味しかった。全てを平らげてしまうだけの根性は僕にはなかったけど。刺激物はあまり僕の胃には合わないし。
「食べようよ、一緒にさ」 「…今?」 「意味がなくなるじゃん。ボク一人で食べても、…ね?」
僕は首を傾げる。時々、僕は白蘭サンの言う事が分からない。拘りとか。きっと、空気が読めないって言うんだろうな。こうゆうの。 僕は気合を入れて起き上がった。本当はだるくてもう少し横になっていたかんだけど、変なトコで白蘭サンの期待を裏切りたくない“良い子ちゃん”になっちゃうんだ。何を考えたのか、小さなフォークでケーキを掬った白蘭サンは僕にそれを差し出してくる。多分……食べさせたいって事なんだろうと思って素直に口を開けた。口の中で蕩けたのは、コーティングをしていたホワイトチョコレート。その後にほわりと薔薇の香りが鼻孔をくすぐる。
「薔薇のレアチーズケーキ。ムースが薔薇なんだってさ」 「…美味しい」
チーズケーキがさっぱりしていて美味しい。くどい甘みもなく上品な味だし、本当に美味しいって思える。甘い物が好きな白蘭サンおすすめなだけあって、文句のつけようもない。
「正チャンって…ほんと、天然なトコあるよね?もしかして、ボクの事からかってるとかある?」 「え?ないです、けど……天然?」 「なんだか雰囲気でないなぁ…ま、いっか。正チャンだしね。…誕生日、おめでと」
さらりと最後に付け加えられた白蘭サンの言葉が、グルグルと頭の中を回った。
「あ、あの…」 「本気で忘れてた?自分の誕生日」 「えっと…はい」
白蘭サンが僕の誕生日って……そんなの、会って初めての事なんだけど。 何を思って、今年に限っていきなりなんだろ。やっぱり、この人の考えてる事、時々分からないな。
「もっと、嬉しそうな顔してくんないかな〜」 「嬉しくない訳じゃなくて、ただ…びっくりしちゃって…」
むくれた白蘭サンに僕が慌てて付け加えたけど、機嫌は直ってくれそうにない。
「なぁんだ…ボクが浮かれてデートしたのに、正チャンは全然そんな心算なかったって訳なんだね?」 「デートって、ご飯食べて…買い物して、……」
いつも無理矢理白蘭サンに付き合わされている時は、そんなパターンだったからデートなんて感覚なんて全然なかった…ってか、今までもそう感じなかっただけで、いつもデートのつもりだったって事なんだろうか。 少しアルコールを口にして、そして…ベッドに一緒に入った訳だけど。それが、いつもと何か違うんだろうか。僕は眉間にシワが寄るのを必死に我慢して、白蘭サンをちらりと見上げた。
「怒って…ますか?」 「べつに、いいよ。正チャンの誕生日だし、特別に許してあげてもいい」
や、やっぱり怒ってるんだ!さあっと血の気が引く気分を感じる。どうしようかとキョロキョロと挙動不審になった僕を見て、白蘭サンがくすっと笑う。
「ボクは今日、ケーキを一口も食べてない」 「あっ…」
甘いものが大好きな白蘭サンがスイーツと呼べるものを口にしたのは、夕食のデザートの杏仁豆腐くらい。それに、今も僕だけがケーキを食べて白蘭サンは口にしてない。
「すごい、美味しいですよ…ケーキ」 「うん、だろうね」 「機嫌、直してください…」
僕は使ってないフォークで、ケーキを掬うと白蘭サンの口に運ぶ。口を開けた白蘭サンにケーキを食べさせた。その間もずっと白蘭サンの視線は僕を捕えて離さない。心臓がドキドキするのを感じる。
「美味しいね」
そう言った白蘭サンの顔を見て僕はホッとする。すっと自然に白蘭サンの顔が近付いてきて、反射的に目を閉じた。そして訪れる口付け。白蘭サンの舌から薔薇の香りがする。
「正チャンのが、何倍も美味しいけどね」 「はっ?!」
ぎゅっと抱き寄せられた。その腕の中で、白蘭サンの温もりを感じるだけで僕は泣きたい気持ちになる。実際、泣きだしてしまいたい。 優しくされると、泣いてしまいたい。偽りでもいい。白蘭サンの言葉が全部嘘でも構わない。僕の気持ちは一点の曇りもなくこの人に向かってる。そんな自分がひどく虚しくて、一人で何もかもを抱え込む事に疲れてしまう。
全ての始まりが僕なら、全ての幕引きをするのが僕の責務だ。 それが、僕がこの人を真剣に好きになった証だ。
「正チャン…?」 「はい?」 「どうして泣いてるの?」 「…え?」
本当に泣いてしまうんて、この人の前で泣いてしまうなんて、絶対に嫌だったのにな。 ああ、また砦がひとつ壊れてしまった気分だ。 実際の僕はこんなに情けなくて、重圧に耐えきれなくなって崩れそうになっている。
「いいよ、泣いても。正チャンの涙なんて早々見られないしね」 「誕生日…だからですか?」 「うん、そうだね。そうゆう事にしようか?」
意識が揺れる。 ゆらゆらから、ふわふわに変わった感覚の中で僕は神様に一つのお願いをした。
「白蘭サン…好きです」 「珍しいなぁ、正チャンがそんな事口にするなんて」 「誕生日なんで、特別なんです」 「ふうん、そっか」
ゆっくりと身体がまたベッドに沈められていく。意識が全部白蘭サンに染められる頃には、僕の誕生日は終わってしまうだろう。365日の中のたった1日。特別でもなんでもない、他愛のない12月の中の1日。その日を特別にしてくれた白蘭サンに僕は感謝している。そして、そんな思い出を僕の中に残した白蘭サンを憎らしくも思う。今日と言う日が来るたびに思いだしてしまうんだろうな。 来年の僕の誕生日に、僕の命があればの話だけれど。
嘲笑した僕に熱い口付けと、愛撫の手が伸ばされた。
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なんかすっごい、ヘタレな話だけど…
正ちゃん誕生日おめでと〜!
一応、正ちゃんがボンゴレに行く前の誕生日って事で(笑)
ご都合主義です。
RUIは一人称ってすごい苦手で、あんま書きません。
ってか今までもSSくらいでしか書いてないと思います。
だからこんだけのテキスト量で一人称はきついってか…書き始めて後悔しました。
なのに、白正ファーストがこれか!
正ちゃんがすごく白蘭の事を好きだって事だけが言いたいだけの話なんですけど(汗)