fx 比較

 

 

 

BLACK&BLUE 2

 

 

 ナルトの隣に当たり前のように座ったサスケの横顔を盗み見る。本当に、本物のサスケのようだ。だが、やはり彼の言っている意味がさっぱり分からないでいる。

「そんで、木の葉にはいつ戻ってくるんだってばよ?」

 サスケのこめかみに青筋が浮かんだが、ナルトはそれに気がつかない。

「…早く、帰ってこいってばよ」

「うるさい奴だな…と言うか、お前……俺の話聞いてるのか?」

「聞いてたけど、意味不明」

 ナルトの機嫌は悪いのだ。それに便乗したかのような、サスケの俺様的態度にもむっとして居る。サスケらしいと言えばそうなのだろうだけれど。

「卒業済ませてんのはいいけど……みんな、お前の帰りを待ってるんだし。もう…いいだろ?木の葉に戻って来ても…」

 説得などとは言えないが、彼と何度も対峙して何度も同じ言葉を繰り返し伝えてきた。軽くあしらわれてしまうだけで、完全に相手にされず殺されかけた事も何度もある。そのサスケが、何を考えたのか自分の目の前にいる。ナルトは不思議な気持ちになりながら、彼を見上げた。

 その視線に気がついたのか、サスケもナルトの方を向く。

「俺は、ここに戻ってくる気はない。ここには俺の居場所は………ないんだ」

 ふっと笑ったサスケの笑みが、とても寂しいものに見えてしまうのはナルトの考え過ぎなのだろうか。

「何言ってんだってばよ!…木の葉には、この里には ――――― お前を待ってる仲間もたくさんいるってば。オレもサクラちゃんも必死に…――――― 」

 サスケがナルトを見つめる視線に冷たいものが交る。ナルトは思わず言葉を切った。

「サスケを待ってる……だから、ここは木の葉は…お前の居場所なんだって」

「お前は、俺の帰る場所か?」

 真剣な声色に、ナルトはじいっとサスケを見つめる事しかできない。当たり前だと言いたいのに、言葉が出てこない。

「俺を待っている奴が、俺の帰る場所なんだろ?…でもな、ナルト。この里に…俺の居場所なんかねえよ」

「サスケ…?」

「それは、俺が一番よく分かってる。それでも、お前が俺の帰る場所になるなら…――― 」

「サスケ」

「お前は、俺と共に来るべきだ」

「なに…言ってんの?」

 サスケの人を馬鹿にするような笑みが口元に浮かぶ。ナルトは思わず唇を噛みしめた。俯いたナルトの周りにふわりと温かい感覚が訪れる。抱き寄せられて、抱きしめられた。それはサスケの腕だ。

「サスケ…」

「別に、里がどうとか世界がどうとか国がどうとか…関係ねえよ。お前が俺の帰る場所なら、お前は俺と一緒に居るべきなんだよ。分かれよ……そうだろ?ナルト」

「違う…」

「お前を必要としているのは、俺なんだよ。気が付け、ウスラトンカチ。こんな小さな籠の中に収まる様な奴じゃねえんだよ。俺も、お前も」

「何を言ってんのか…意味分かんねえって!!」

 ナルトの手がサスケの胸を押し返す。

「最高の好敵手…俺とお前の関係だ」

「なんだってばよ!」

「俺の存在をお前は常に必要としている」

 ナルトはぶんぶんと首を振る。サスケの言葉は甘い毒を含んでいる。心の頭の奥深くに眠るなにかに囁きかけるような声に、何かが支配される。

「孤独。お前は本当のその意味を知ってるだろ?俺と同じように……人の本当の姿も、力も、何もかも……俺たちは知らずの内に全て共有してんだよ。だから、俺はお前の考えてる事が手に取る様に分かる。お前は、この里を出て俺と一緒に居るべきなんだってな」

 ナルトは心臓が高鳴るのを感じていた。ドクドクと心臓が早く脈打つ。サスケの言っている事はよく分からないのに、何かを感じてしまっている。それが本能だと気が付いたのはずっと後の事だけれど。

「俺を本当に求めているのは、サクラでも同期の仲間でもない。……お前だ」

「オレは…サスケを木の葉に連れ戻して…昔みてえに ――――――― 」

 サスケの表情を見て、ナルトはそれが無駄な事だと察知してしまった。ナルトの言葉はサスケの中をすり抜けるだけで、それ以上でも以下でもない。

 本当は分かっているのかもしれない。もう、元には戻れないと。昔の様にサクラと三人で笑い合う事はできないと言う事も。

「お前が俺を必要としていると言うなら、俺と一緒に来い」

 それはこの里を捨てると言う事。ナルトは力なく首を振る。

 そんな事はできない。できるはずがない。

「できねえ…」

「俺と木の葉を天秤にかけられないと?」

「ンなの…当たり前だろ? サスケも思い出せよ。この里には、仲間がたくさんいて…カカシ先生も火影も…みんな、俺たちが大切にしてきたものなんじゃねえのかよ?」

 サスケが里を抜けて、こうやってまともに話をするのは初めてだ。自分の言葉を聞いてくれたのも初めてだ。だけれど、サスケがナルトに突きつけるものはナルトが了承できるものではない。本当の意味でサスケを救えるような打開策でもない。

「大切……か」

 サスケが失笑した。

「そんな事、考えた事ねえよ」

「サスケ…」

 自分たちの考えは平行線で、その意志も天と地の差がある。それを少しでも埋めたいとナルトは思ってきた。

「お前に会いに来た…そう言っただろ?正しく言うと、お前を迎えにきたんだぜ?」

「む、かえ…?」

「お前のいる場所はここじゃねえんだってな。 お前を思ってる俺の居る場所がお前の本来居るべき場所なんだよ」

「違…う」

 この里には自分を大切にしてくれる仲間がいる。それに、自分を愛してくれる者もいる。だから、この場所に帰りたいと思うのだ。この里で、サスケを迎えてやりたいと、彼の時間を取り戻したいと思っているのだ。

「奇麗事並べてんじゃねえよ。そんなの、俺は“卒業”したぜ?」

「サスケ…」

 サスケは眉を潜めるナルトの手を取る。ぎゅっと握られたその温もりにナルトはピクリと反応して彼を見上げた。

「もうすぐ…お前の誕生日だろ?」

 ナルトは頭からすっぽり抜け落ちていた事に気が付く。最近は、何かをゆっくり考える時間もなかったのが本当の所である。

「誕生日…」

「忘れてたのか?お前らしいな…」

 くすくすと笑ったサスケの顔が穏やかなものに見えた。

「悪りぃけど、オレはサスケの生まれた日なんか知らねぇってばよ」

「別に構わなねえし、そんな事」

「そんな事…?」

 生まれた日、この世に誕生した日。

「関係ねえの?」

「別に俺の生まれた日なんて、関係ねえし。俺にとっちゃ、お前の生まれた日のが大切だぜ?」

 ナルトは急に寂しい気持ちに襲われた。シカマルにとってはどうだろう。自分の生まれた日は、彼にとってはどんな日なんだろう。

「四日後…お前の生まれた日に、俺はお前をこの里から連れて行く」

「そんな勝手な事…!お前の都合じゃん、そんなの……」

「お前が選べよ。この俺を」

 ズキンと胸に響く声にナルトは目を見開く。

「火の国の外れで、お前を待ってる」

「できねえ…オレは、そんな事できねえよっ!」

「お前を必要としてるのは、俺だ。誰ものでもなく、この俺だ。俺が、お前の帰る場所になる」

 サスケの手がナルトの頬に添えられた。そっと撫ぜられて、ナルトは動きを止める。

「お前が、好きだ。ナルト……何度言ったら分かるんだ?このウスラトンカチ」

 ナルトは否定したいのか違うのか、分からない気持ちで首を横に振った。

「選べって言ってんだろ?」

「……サスケ」

「俺を…選べ」

 ナルトの見つめるサスケの瞳が赤く染まる。冷たい紅い瞳。

「待ってる ――――― お前に、寂しい思いはさせない。今のお前みたいにな」

 サスケの唇がナルトの柔らかい頬に触れる。動けないナルトはその行為を甘受しながら、ぎゅっと目を閉じた。そして、もう一度目を開けた時にはサスケの姿はなかったのである。

 

 

 

「見〜つけたっ! ナルト」

 バサリと大きな鳥と一緒に降り立ったサイは、にこりとナルトに笑いかける。

「サイ…」

「探したよ。こんなトコにいるなんてね……さっき見た時は見つけられなかったのになぁ」

 きっとサスケの幻覚の中にいたのだろう。ナルトはじっと地面を見つめる。サスケの言っていた事の真意を測り損ねる。分からない。彼が求めているもの。そして、自分がどうしたいのか。

「えっと、なんだろ。顔色が悪いって言うのかな。ナルト…?」

「なんでもねえ…」

「サクラが一緒にゴハンしようって」

「……悪りぃけど、今日は帰るつもりだし」

「ナルト。元気ないけど、風邪でもひいたとか ―――…」

 サイの手がナルトに触れそうになった所で、ナルトはその手を払う。そして、はっとして驚いた顔をしているサイに「ごめん」と謝った。

「そんなんじゃねえよっ!オレの取り柄は元気だってばよ」

 無理矢理に作った笑顔に、サイは柔らかい笑みを作って頷いた。

「そうだね。じゃ、疲れてるみたいだし…アパートまで送るよ」

「サイ…」

 彼の手を振り払ってしまった事に何故か罪悪感が湧きあがる。

 

『ここには俺の居場所は………ないんだ』

『お前を思ってる俺の居る場所がお前の本来居るべき場所なんだよ』

『お前が選べよ。この俺を』

『俺を本当に求めているのは、サクラでも同期の仲間でもない。……お前だ』

『お前は、俺と共に来るべきだ』

 

 サスケの言葉がぐるぐると頭の中を回る。あんな風にサスケから言われた事は初めてだ。ナルトは小さな頃から火影になるのが夢だった。この里の誰もから認められるのが夢だった。それしか、なかったのである。自分の存在理由を確立する方法が。

 仲間が増え、大切なものが増え、大好きな仲間もたくさんできた。

 

『お前に、寂しい思いはさせない。今のお前みたいにな』

 

 寂しいのだろうか。仲間も出来て、毎日が充実しているはずの自分は、寂しいのだろうか。少なくともサスケからはそう見えたというのだろうか。

「ナルト、行こうか?」

 サイの言葉にナルトは頷く。今は何も考えられないし、考えたくない。ただ、アパートに帰って眠りたい。ナルトはサイの手を取ると、上空高く舞い上がったのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

すごくないですか!

今回のサスケさん、すごいマトモな事言ってるんですが。

しかも、態度もマトモなんですけど…?

いやぁ…自分でびっくり()

一応、ナルトを口説いてる。初めてだ〜すげ〜!