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BLACK&BLUE 1
「は〜…疲れた疲れた疲れた!!!なんだってばよ〜コレって…」 ナルトはサクラから渡された缶のお茶のプルトップを開ける。一口飲んで、眉を潜めた。やっぱり家で飲んで居る物の方が数倍おいしい。ヨシノに頼んで、直接農家から仕入れているものは質が違うような気がした。それでも、お茶には変わりなく少しはホッとできる一瞬。 「な〜んか、すっげえ雑用っぽいような感じがするのはオレだけだってば?」 ナルトの愚痴に、隣に腰かけたサイがにこりと笑う。 「雑用って…これも任務の一環でしょ?ナルト」 「う〜〜〜〜…でも、なんかいつもと様子が違うってか、緊急を要するものなのか不思議なんだってばよ」 「任務ってのは、確かにランク毎にその任務内容も変わってくる。それでも、全てに手を抜かず全力で立ち向かうのがナルトなんじゃないのかな?」 サイの言う事は尤もである。むすりと顔を歪めながらも、ナルトは渋々頷くしかないのだ。ナルト達の目の前ではカカシがいつもの笑顔を浮かべている。多分…憶測の範囲でしかないが、覆われた顔から唯一覗く右目が、楽しそうに見えるのはナルトの気の所為だろうか? 「カカシせんせ〜…この後の予定ってどうなってるんだってば?」 「う〜ん…」 カカシは手元の資料をぺらぺらと捲る。 「そうだねぇ…あと、3つくらいこなしたら解散だから。安心しなさいな。それにお前は殺しても死なないデショ?」 「よく言うってばよ!労働基準局に訴えたい気分だってばよ!」 「まぁまぁ…そんなに目くじら立てるんじゃないよぉ。労働の後には楽〜しい休日が待ってるもんだ」 「そ〜よ!ナルト観念なさい」 ピシリとサクラから叱咤されたナルトは「分かったってばよ…」と呟くように応えたのだった。缶のお茶にふうふうと息を吹きかける。飲めないほど熱くはないのだが、ゴクゴク飲み干せるほどでもない。心の中には早く自宅に帰ってベッドにダイブしたい気持ちでいっぱいである。朝のシカマルとの甘い一時はカカシの訪問によってぶち壊しだ。僅かな時間でも共有できる事を楽しみにしていたナルトにとっては、愚痴しか出てこない。 「腹減った〜……朝メシ食いっぱぐれた〜」 ぶつぶつ言うナルトの目の前にサイが見慣れた丸薬を取り出す。 「なんだってば?」 「うん?兵糧丸、小休止の後は任務が待ってるでしょ?少しは体力を……」 「腹のタシになんねぇの!」 それでもナルトはサイの手から兵糧丸を奪い取ると、がりがりと音を立ててかみ砕く。チャクラの補充にはなるのだし、さっさと任務を片づけて本当に休日をもぎ取りたいのだ。 むすりとするナルトを横目でちらりと伺ったサクラは、そっとカカシに歩み寄る。 「先生、今日の任務ってどうやって入れたんですか?」 「ん〜?…そりゃ、簡単簡単。ナルトがどうしても、“どんな任務”でもやりたいって我儘言ってるって五代目に伝えたら、DランクからCランクの任務書の束をくれたってワケ」 「……微妙に、私たちも巻き込まれてる感じするんですけど?」 「何言ってんの!サクラが言いだしたんでしょ〜が〜」 「それは……そうですけど」 「これが一蓮托生ってやつだね、サクラ」 こっそりサクラとカカシの後ろにいたサイがにっこりと笑顔を浮かべる。楽しそうに見える彼に、サクラは苦笑する。サイにしてみても、こんな事は初めてなのだろう。彼も自分たちと一緒に行動するようになって少しずつ変わってきている。良い変化なのだと思う。 「こうなったら、最後の最後に笑ってやろうじゃないの!サイ、気合入れてくわよ〜」 サクラの握りこぶしを見つめたサイとカカシは顔を見合わせてくすりと笑った。
「おっ疲れさん!」 ナルトの肩にぽんとカカシの手が置かれる。じっとりと睨みつけられて、カカシは笑って誤魔化す事にした。 「なぁに〜…その顔は。不満あります〜みたいな?」 「なぁんかさ、……すっげえ、疲れたんだってばよ」 「その疲労感を引きずりつつ入る風呂に、メシ!せんせーの心意気ってのをわかってるのかな?ナルト」 「こ…心意気ぃ?殆ど雑用ばっかの任務で木の葉中を駆け回ったんだってばよ?ぜってー今日の任務は効率が悪いってばよ。よくよく考えてみれば、オレとサクラちゃん、それにサイにカカシ先生。それぞれに分担して任務をこなせば、ソッコー終わったってばよ」 ふうっと溜息をついたカカシは、山の端に沈む夕日を見つめる。思いっきり哀愁を込めて。その横顔にナルトは何故か悪い事を言ってしまった気分になってしまった。 「カカシ先生、その…気分悪くなったってば?あのさ……オレってば―――」 「一端の口まできくようになっちゃって……先生、もう奈落の底まで落ちちゃいそうな気分だよねぇ。みんなで楽しく任務遂行!この達成感こそ初心デショ?ナルトはそれを忘れちゃったんだねぇ。はあ、大人になるってサミシイよねぇ。俺も年をとったんだなぁ〜いやはや…」 「そんなつもりねえってば!」 「でもさ、ナルト。やっぱり、ご褒美は必要だよねぇ…今日は頑張った訳だし、先生ゴハン奢っちゃおうか?」 「ええええええっ!!!」 ナルトは返事に困る。素直に頷く事が出来ない。「奢り」だと言われれば二つ返事なのだが。それはいつもならば。しかも相手がはたけカカシでなければ。カカシのこの殊勝な態度はなんだろう。財布の紐が硬く(高給取りの癖に)任務が終われば、ドロンしてしまうカカシらしからぬ言葉だ。これは裏があるのだろうか。何かのどんでん返しが待っているとしか思えない。 「先生の気持ちは、ありがたく受け取っておくってばよ!そ、それだけで十分だって」 「ナルト〜…!!」 カカシの長い腕がナルトを抱き寄せる。 「ぎゃあっ!抱きつくなってばよ。気持ち悪りぃってば――――っ!」 カカシとナルトのやり取りと少し離れていた所から見ていたサクラが、無線を装着すると周波数を合わせる。 「任務終了で、今は木の葉の外れ……D地点に居るわ。そちらの動向は?」 『おっつかれさん〜!シカマルは任務を終えて、今は火影様のトコだぜ』 無線から聞こえたキバの声にサクラは、う〜んと唸る。 「そう…なら、二人が鉢合わせしない為にもナルトの拘束はまだ続けた方がいいわよね?」 『そりゃ、必要ねえぜ。今夜は八班がシカマルの野郎を引きとめてやるからよ』 「ふうん、八班…ヒナタとシノで大丈夫なの〜?年の為にもナルトを……」 サクラはふとカカシに視線を向けた。そして、共に居るはずのナルトの姿がない事に目を丸くする。 「ナ…ナルト?――――― いない」 『サクラ、どうかしたのかよ?』 「ゴメン、後で連絡するっ!」 サクラは慌ててカカシの元に駆け寄る。その形相を見たカカシはぽりぽりと頭をかいていた。 「………なに、誤魔化してんですか?」 「ゴメンゴメン!ナルトに逃げられちゃたよ〜」 「先生!逃げられたんじゃなくて、逃がしたんでしょ!も〜〜っ、ここ一番って時に。 サイ!」 事の成り行きを見ているだけだったサイの瞳がキラリンと光る。 「ナルトを上空から見つけてくれる?」 「うん!分かったよ」 面白い遊びを見つけた子供のような笑みを浮かべたサイは、嬉しそうに上空に飛び立った。 「しゃーーんなろ〜…逃がしゃしないわよっ!」 サクラの瞳に燃えたぎる熱い炎を見たカカシは肩をすくめながら、息をつく。人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られてナントヤラ…そんな事を思い浮かべたカカシは、やっぱり自分は年を取ったのだと思わず苦笑してしまう。ナルトとて少しは一人きりの時間を取りたいのではないだろうか。そんな老婆心からナルトの背中に手を振ってしまったのだが。恋人との二人の時間は取れなくても、ナルトの時間も優先するべきだ。今の彼女たちに言っても聞きいれないだろう妥協策を胸にしまうと、数日後のパーティーを楽しみにサクラに別れを告げたのだった。
ナルトは後ろを振り返る。 「誰も居ねえな…」 そして、大きく息をつく。全速力で走ったのはいいが、疲労感の倍増しだ。そして、ふと自分の立っている場所に気が付く。 「……?あれ」 自分のアパートに帰るべく慣れた道を走っていたはずなのに、ナルトが居るのは先程カカシと別れた方向とは正反対になる木の葉の外れ。 「何時の間に、自分んちまですっ飛ばしたんだってば?」 難しい事を考えるのは苦手だ。だから、目に映ったベンチに腰を掛ける。あちこち飛び回ってスタミナだけは自信があるナルトもさすがに疲れていた。 「ホントはシカマルと朝メシの予定だったのにさ〜……タイミング悪りぃの〜」 今朝感じたシカマルの温もりがもう感じられない。ナルトは子供のように脹れっ面になる。言葉にするなら、コンチクショーだ。足をぷらぷらさせながら、俯く。その耳に聞こえるはずのない声が聞こえた。 「いつ見ても、間抜け面だな。お前」 ナルトは俯いて地面を見つめていた視線を上げる。 「サスケ…そんな、な…なんで、おま…」 「いちいち煩いんだよ、ウスラトンカチ」 「はあ?―――――― なんで、サスケが木の葉にいるんだってばよ?お前、誰?誰が変化してんだよ!」 「ホント煩い……相変わらずと言ったところか。成長してないな」 ナルトはじいっと腕を組んだサスケを見上げる。夕日に逆光になった彼の表情は読み取れないけれど、機嫌は悪くなさそうだ。久し振りに聞く厭味な科白は、ナルトの知っているうちはサスケである。 「嘘、だろ……?」 「幻でも変化した誰かでもねえ…」 「サスケ……抜け忍、卒業したんだってば?」 「……――――――― お前に、会いに来たんだ」 「へ?」 わざわざ危険をかいくぐり、ここへ来た理由は自分に会うため。ナルトは驚いて言葉が返せない。木の葉のセキュリティをものともしない彼の絶対の力を見せつけられたような気がした。 「そんで、卒業して木の葉に骨埋める覚悟かたまったのかよ」 押せば逃げて行く背中を見つめる事しかできなかったはずのサスケが、己の意志で「木の葉」にいる。 「俺は、里を抜けた時に卒業はすませてんだよ。何度言っても分からない奴だな。バカ」 憎まれ口は健在だ。いつも纏っている冷たい拒絶する様な雰囲気は感じられない。 「ウスラトンカチ。人の話を聞け。お前に、―――――― …会いに来た」 「……オレに?」 サスケは動揺しているナルトに満足しながら、にやりと皮肉っぽい笑みを口元に乗せた。
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あはは。書き終われば、前回と同じくらいのテキスト量でした。
おっかしいなぁ。
んで、最後にサスケさん登場〜!
ちょっと、マトモなサスケさんが書けそうな予感☆