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always
いつものように、ベッドヘッドに背を預け書物を広げている。一応、任務に関連する事なので目を通している程度なのだが、定期的に捲られる紙の速度は変わらない。 「シッカマル〜」 それを邪魔するつもりもないのだが、これもいつもの如くシカマルの腕の間を縫ってナルトは抱きついて擦り寄った。 「ん?」 視線は本に向けられたままの、気のない返事。 「難しい顔してるってばよ? 難しいの?」 「ん〜…ま、それなり」 「ふうん」 シカマルの視線は書物に向けられたままで、ナルトの方を見ようとしない。いつもの通りと言えばどうなのだが、ナルトは急に寂しい気持ちに襲われる。 「なぁ、シカマル」 「ん〜?」 「好きだってばよ?」 「ん、俺も」 その適当な返事にさすがのナルトもむっとする。意地悪だと思ったのだが、シカマルのほっぺたをぎゅっと抓った。痛くないだろうが、自分の方を見て欲しい精一杯の我儘。 「邪魔すんなって……コレ、目だけは通しておきてーの」 「オレの気持ち、分かってる?」 ぶすりと頬を膨らませたナルトに、ちらりとシカマルの視線が向けられた。 だが、それも一瞬。 「ああ、うるせーくらいに言われてるからな。さすがの俺も分かってるっての」 「………うるさいって」 その表現には、さすがのナルトもむっとしてしまう。うるさいとまで言われてカチンときた。 「………ひっでーの」 ぽそりと呟いて、抱きついていた腕をそっと外す。一応、これでも怒っているのだと目一杯の意思表示をしてみようとしたのだ。むすりとしながら離れようとしたナルトの体に、不意にシカマルの腕が回った。片手は書物を持ったままで、視線もナルトには向けていない。それでも、肩に回った腕がぐいっとナルトの身体を抱き寄せたのだ。 「ちょっと、待ってろって言ってるだろ…」 シカマルの掌が、機嫌を損ねたナルトをあやす様に定期的なリズムを取りながら背中をぽんぽんと叩く。言葉は少ないけれど、決してないがしろにされている訳でもない。それはナルトも重々承知している。こうやって、仕事の合間にも構ってくれるのも彼の優しさの一つだ。言葉にしなくてもナルトの気持ちを上手にくみ取ってくれる。それでもたまには、言葉してほしいと思うのは我儘なのだろうか。シカマルの腕を振りほどけないまま、やっぱりシカマルの手中にはまっているような気分になる。頭をコツリと胸に寄せて、シカマルの匂いを吸い込んだ。 やっぱり、好きで。それだけは譲れなくて。ついつい、言葉にして伝えたくなってしまうのだ。 それなのに、煩いとはどうだろうか?考えるとむかつくので極力やめようとするだが……ぐるぐると意味のない言葉だけが回る。 むかつくものは、ムカツク。優しくされていると分かっているし、好かれているとも大切にされているとも思っているが。 もんもんとする気持ち胸に抱えたまま、ナルトはシカマルの腕の中でじっとしているしかなかった。
シカマルがナルトのとある変化に気が付いたのは最近の事。 ふとした瞬間に、今まで感じなかった違和感を覚える事がある。それは、他愛もないことなのだけれど一度気になってしまうと、余計に目についてしまうのが人間の悲しい性だ。 「おい、ナルト」 いつものように呼ぶと、首を傾げてシカマルに目線を向けるナルトの姿がある。普段と変わりなく彼のアパートで夕飯を取り、個々の時間を満喫していた。 「なんだってばよ?」 言葉の続きを急かす様な口調に、首を傾げたいのは自分だとシカマルは思った。 「……あ〜、用は、特にないな」 ただ呼んだだけ。そんな単純な理由。 「ふ〜ん、そっか」 素っ気ない返事をしたナルトは、ごそごそと翌日の準備を再開させる。慣れた手つきでクナイの刃先を見たり、巻物や起爆札など、普段と変わりなくポーチの中に仕舞っていた。シカマルはなんだか胸の中のざわつきを感じながらも、次回の任務の資料に視線を戻す。目を通して、頭の中で勝手に分析する自分が居て、任務をスムーズに遂行する手順をシュミレーション。隊長として班員をまとめていかなくてはいけないという責任感と、無駄な労力は使いたくないという自分に対するエコロジーのなせる技なのだが、それにもどうも気が入らない。 「……ナルト」 また口にしてしまって、それが無意識だったことに気が付いたのは、訝しげな表情を浮かべたナルトの顔を見た瞬間だった。 「シカマル、喉でも渇いた?」 「いや、……そーゆうんじゃなくって」 「もう、今日のシカマルはハッキリしないってばよ」 むすりとしたナルトの視線を受けて、心のどこかで満足している自分にも気が付く。 手の中の紙の束がくしゃりとなる感覚。 「お前、用意終わったのか?」 「ん?…まあ、一通りは終わったかなぁ」 「じゃ、こっち来いよ」 思わず口から出た科白にナルトの瞳が大きく見開かれる。青い大好きなその色が自分だけを見つめている瞬間。意識が全て自分に向かっているという過信。 「……え?だって、シカマル、明日の準備してんじゃねえの?」 ナルトの言う事は尤もだ。資料には一応目を通したので、後は頭の中でいくつかのパターンを組み替える作業を済ませてしまうだけ。 「これか?」 シカマルは手にしている紙を掲げる。素直にコクリと頷くナルトを見て、シカマルは興味がなくなった紙の束をぽいっと放り投げた。 「もう、読んだ」 「……終わったってこと?」 「全部は終わってねえかな。後は、ココ」 シカマルは指先でこめかみをトントンとする。一度目にした資料の内容は完全に頭の中にインプットされているのだ。だから、データが頭の中に移行されているのでもう媒体は必要ない。 「それで、それがオレとなんの関係があるんだってばよ」 至極真面目に返してきたナルトに、シカマルはくすっと笑う。 それは自分への嘲笑。 「来いって」 ナルトのベッドの上で寛ぎながら、次回の任務の整理をする事が常である。その「常」に必要なものを思い出した。 シカマルの手の平が、ベッドを叩く。そこは自分の隣である。ナルトは納得できないという顔付きのままそれに従った。シカマルが指した場所に座ると、長い腕が身体を抱き寄せる。 「……!? し、シカマル?」 「…ったく、こんな簡単な事だったのかよ」 呟きに近い声が耳元で聞こえた。身体を捩ってシカマルの顔を見上げると、口の端を少しあげているシカマルの顔が視界いっぱいになる。 「今日のシカマル、おかしいって……」 「俺に言わせると、最近のお前のがおかしいって」 「え〜?オレ?」 シカマルの言葉にナルトは不服そうな視線を向けてきた。だから、シカマルは無言で頷く。 ナルトは無実の罪をきせられたような、責任転換をされたような複雑な心境でシカマルをじっと見つめ返した。 「なんで、オレ?」 「お前が隣にいないから」 「はあっ?」 シカマルの科白を理解したのかナルトの顔が真っ赤になった。シカマルにも恥ずかしい事を言っているという自覚はあるのだ。あるのだが、これが真実なのだからしょうがない。 「いつも、こうして仕事してんだよ」 肩を強引に抱かれて身体が密着した。 「……なんだよ!いっつも、すげー迷惑そうだったじゃんか」 「迷惑? …ンなこと、言ったっけ?」 真剣に返されてナルトも一瞬戸惑う。言われたかどうだか、記憶が定かでないのが本当のトコロ。身体が触れて響いてくる鼓動に、ナルトの身体からくったりと余分な力が抜ける。 「…似たような事、言ってるってばよ」 「言ってねーけどな」 「言ったんだってばよ」 拗ねているという口調のナルトの顔を覗きこむと、案の定彼は膨れている。そんな子供っぽい表情も久し振りに目にするような気がするのは、気の所為ではない。 「言えよ、何に拗ねてんだ?」 「べつに…」 瞼が伏せられて、瞳が半分隠れる。分かりやすい態度にシカマルは不謹慎にも、ナルトの事を可愛いと思ってしまった。 「言わねえと、わかんねーだろ?」 「シカマルは言っても、分かんねえもん」 「……なんだか奥深い話みてえだな?」 ツンとした所作は、いかにもな態度で。分かりやすくて可愛い恋人を心底愛しく感じる。 「拗ねてねえで、教えてくれよ」 「オレは鬱陶しいんだろ?」 「うっとうしい……」 ナルトの逆切れした言葉を反芻する。 「それ、ヒント?」 「違うって……ヒントとかじゃなくって、そのものだってばよ」 ナルトとの言葉遊びは楽しいのだが、時々難解だ。パズルのピースをはめていくような感じである。だが、それを紐解くのがシカマルは嫌いでない。 「ふ〜ん、鬱陶しいねぇ」 抱いている肩がぴくりと反応する。 「お前にそんな事言ったか?」 「言ったってばよ!シカマル、覚えてねえの?オレがシカマルの事好きだって行った時に、鬱陶しいくらい言われてるから分かるって言っただろ」 「ほ〜……鬱陶しいねぇ」 「あ!」 ナルトはぱっと自分の口に手を当てた。ついついシカマルの巧妙な言葉に、うっかり口にしてしまった。 「俺は鬱陶しいなんて、一言も言ってねえ。うるさいくらいって言ったんだ」 「お、同じ事じゃねえの?」 シカマルの記憶力の良さには脱帽してしまう。 「同じじゃない」 きっぱりと言い切られてしまうとナルトも反論できなくなる。 「うるさいってのは言い方が悪かったな…俺も。うるさいんじゃなくって、いつもの事ってくらいの軽い感じだったんだけど、誤解させたってことだろ? 悪りぃな、ナルト」 好きだと、全身全霊でぶつかってくるナルトは実にストレートである。 言葉も態度も、全てでシカマルへの気持ちを表現してくれる。恋人冥利だと言っていいのか、言われる事に嬉しくないはずはない。 「ちゃんと俺もお前のこと好きだって、言ってんだろ?」 「すげえ軽々しくだけど!」 とげとげしい口調も、彼の愛情表現のひとつなのだと理解できる。 「そんなんじゃねえって……だから、誤解させたって。ごめん、ナルト」 潔く謝られたナルトは、やっぱり反論の余地がなくなってしまうのだ。 「シカマルってば……狡い」 最後の最後に白旗を振るのはいつも、自分。八つ当たりだと分かっているが、このパターンから行くと清廉潔白なシカマルの態度に折れるしかないのはナルトなのだ。 「俺の分までお前が好きだって言ってくれるから、それに甘えてたのかもな…だけどな―――」 シカマルが少しだけ躊躇した様に言葉を切った。 「お前が近くにいねーと、なんかしっくりこねえみたいだわ」 「シカマル……?」 たまにしか聞けない、甘い言葉。それに感動してしまう自分はきっと単純なのだと、ナルトは少しだけ不満だ。 「オレが好きって言ったら、うるせーんだろ?」 「違げーって」 「……邪魔してるみたく、感じたってばよ」 「お前が傍にいると、安心する。好きだって言われると、嬉しい」 まるで陳腐な口説き文句。思わずシカマルには似合わないと思ってしまう。 「それって、オレが拗ねてるから言ってんの?」 「バ〜カ。俺はそんなに安くねえって」 くくっと笑ったシカマルは機嫌が良さそうだ。 ナルトは心の中で、唸ってしまう。 「俺が言う前に、お前が言ってくれてこうやってしてるだけで、俺は自分自身に自惚れてんだよ」 たまにしま吐露してくれない感情を、それでも要点を押さえて話すシカマルの言葉は巧妙だ。それはナルトに対して気持ちを誤魔化そうとか、機嫌をとろうとかでない所がナルトが白旗を振ってしまう理由。 「素っ気ない態度だと、俺の方が落ちつかねえよ」 「……ウン」 ナルトの機嫌が上昇する魔法の言葉を口にしたシカマルは、柔和な表情を浮かべている。 「“うるさいくらい”に、お前が好きだって言ってくれるのは嬉しいし、俺も本気で同じ気持ちだっての」 「ウン」 「そんでナルトが近くにいてくれると、安心する」 「あ〜〜〜〜……恥ずかしいから、もういいってばよ!!!」 紅くなった頬をかくすように顔を覆ったナルトの指を一つずつ外して、甘い唇に吸い寄せられた。 「お前はお前でいい……俺の配慮が足りないのは、やっぱ悪りぃことだしな?」 「……やっぱ、オレの負けだってばよ」 ナルトなりに懸命に考えて、なるべくシカマルの邪魔にならないようにと考えてみた。それと、邪魔扱いされるのは嫌だから必要以上にくっついていくのを止めた。普通に…というのが意外と難しく、ふいに心の枷が外れてしまいそうな事も何度もあったけれど。 もっと自分を見て欲しいとか、そんな我儘は口に出来ない。本当は大きな声で叫びたいけれど、お互いの立場などを考慮してナルトなりの選択をしてみたのだ。 それが成功なのかそうでないのか、今となっては分からない。つい、好きだという気持ちが心から溢れて口にしてしまっていた。それを我慢しようと、少しだけ視線を違う方に向けてみたのだ。最初は苦痛だったソレも数日経つと慣れてくる。毎日べったりとしている訳でもないし、お互いに仕事を持ち帰ることだってある(殆どがシカマルなのだけれど)。 「オレ、シカマルの事好きだってばよ」 拗ねた口調にシカマルは肩を抱く腕に力を込めた。 「……好きだから好きだって言うけど、迷惑っぽいのとかやだし……そーゆうの感じると、寂しくなるし……シカマルに嫌われたくねーし。だから、シカマルに鬱陶しって思われないようにって思ったんだってばよ」 「お前なぁ…」 呆れたようなシカマルは、一呼吸おいてふうっと息を吐いた。 「そう思わせたのは完全に俺だな?」 「わかんねえ…」 「俺だよ、俺。全部俺の所為にしとけって。お前の努力は空回りってやつだ。俺はお前が好きだし、本当に邪魔だとか鬱陶しいって思ってなんなら、ナルトのとこに来る訳ねえだろ?」 少しでもナルトとの時間を共有したいと思っているから、いそいそと彼の所に通ってしまうのだ。そこに仕事を持ち帰ってしまうのは悪いと思うが、一番安心できる場所と自分の一番好きなシチュエーチョンで“仕事”が出来るのは、最高の贅沢だったりする。それは、シカマルの自己中心的なエゴをナルトに押し付けていたに過ぎないのだろう。 その結果、現状に至ってしまったと言う訳だ。 「お前がすげー可愛いから、困る」 「か、可愛いっ?!」 男としての褒め言葉としては承服できなくて眉を潜めてしまった。 「可愛いだろ? お前みたいに可愛い奴はいねえ…」 「それって、喜んでいいんだってば?」 「さあ?ナルトの受け取り方の問題だろ?」 「………シカマルなら、可愛いって思われても構わねえってばよ」 顔は真っ赤で少し早口。照れている顔も、やっぱり可愛く見えてちゅっと頬にキスを落とした。 「俺意外には可愛いなんて思わせんじゃねえよ」 「ヤキモチ?」 「……だな」 くすっと笑ったシカマルが、柔らかい唇を指で摩った。ドキドキしながら見上げたナルトは、ぱちぱちと瞬きをしてからそっと瞼を閉じた。 何かの合図のようにふわりと優しい口付けが降りてくる。 抱きしめられて心が温かくなるのに比例して、身体が熱を持ち始めた。知らない間に組み敷かれていた事に驚きながらも、シカマルの舌に自分のそれを絡める。 「好きだぜ、ナルト」 たまにしか言ってくれないけれど、十分に重みのある言葉。 「お前の言いたい事は、だいたい分かった……いつも、分かってんだ」 「シカマル……」 「だから、お前はナルトのままでいろよ。俺たちはいつでも“いつもの俺たち”でいようぜ」 思い合っていると、心が知っている。完璧な生き物でないからすれ違う感情もあるけれど、その分愛しさを感じこうやって気持ちを確かめる事も出来る。 自分を変えると言う事も難しいが、変わらないと言う事も難しいのだ。 「今日は、どんだけ俺がお前に依存してんのか教えてやる……寝かせねえからな」 「あ……明日、任務……早いってば」 「知ってる」 それでも、お互いに高まった感情を伝えあう行為を止められない事も、知っている。
響く鼓動が早くなって、夜が更ける。 目が覚めて明日が始まる瞬間に、 いつもの自分たちで挨拶を交わせる事に幸せを感じながら、キスを交わした。
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こまごま更新します、とか言っといて出来ない自分が、どうよ?
これは、ふっと思いついて他の話を書きながらやってました。
ホントは2〜3つに分けて、ちまっとアップしようと思っていたんです。
でも、できなかった(笑)
これって性格の問題でしょうか?
ブログSSの「Do you love me??」が少し、alwaysと同じような雰囲気の話です。
出来るなら、この話の中に上手く放り込みたかったのですが、無理でした…
ちょっと、ってか大袈裟にラブいシカナルが書きたくて、この結果っす!