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act 7
ぴっと無線機の周波数を合わせる。 『こちら、A地点…聞こえますか?』 ひっそりと囁くような声に「聞こえてるよ〜」と呑気な返事を返す。 『カカシ先生〜…ふざけないでくださいよ!』 その声色でむすりとしたサクラの顔が浮かぶ。カカシはくすりと笑った。 「はいはい、聞こえてるしふざけてないし…とりあえず捕獲してくるから安心しなさいな〜」 『せんせいっ〜!真面目に聞いてくださいよ?』 「サクラ〜。そんなに苛々してると小シワが増えるよ?」 返事はブチンと切れた無線の音。年頃の女の子に言う様な話題ではなかったのかもしれない。見上げれば晴天の空。 「ん〜〜!今日は“任務”日和だねぇ」 サクラ達の「作戦」を聞いてカカシは思わず笑ってしまった。きっと本人たちよりも躍起になっているのは周りの方だろう。傍から見ているとただ面白いだけである。そして、若いなぁと思うのだ。否、今だからこそ彼らにも余裕が出てきたのかもしれない。下忍からそれぞれが中忍なり上忍になり、それぞれが小隊を率いるまでの立場になった。毎日が必死で何もかもに驚いていたあの小さな子供たちが、ようやく自分たちの生活に余裕を見出したのだ。 「これも成長と言うやつかねぇ…」 誰かに聞かれたらジジ臭いと言われてしまいそうな独り言を呟いて、カカシは目的地に向かったのであった。
「シカマル!朝メシどうする?」 「そうだなぁ…別に食っても食わなくてもいい感じなんだけどよ。お前の腹の具合はどうだ?」 「…オレ?」 ベッドの上でひとしきりじゃれあったシカマルとナルトであったが、今は二人ともシャワーを浴びてさっぱりとしている。 「う〜ん…オレは今日休みだから、けっこうゆっくりできるってばよ?」 上目づかいに見つめられて、シカマルは口元に笑みを乗せた。その視線の一つすら甘えた仕草に見えてしまう。 「なら、…この間カカシ先生と待ち合わせた店行くか?色々、朝のメニューも充実してるみたいだし」 「あ、いいってばね〜。でも、シカマルは任務とか大丈夫なのか?なんか、忙しいみてえだけど…」 「あ、ああ…メシ食う時間くらいあるに決まってんだろ」 ナルトの手前、面倒な事に巻き込まれて忙しいと言う事になっている。午後からCランク任務が入っているが問題はない。本当に食事の時間くらいはあるし、昼まではナルトとゆっくりできるであろう。シカマルの言葉を聞いたナルトは嬉しそうな笑顔になる。 「へへっ…じゃ、出かけるってばよ!」 ナルトの様子を見てくすりと笑ったシカマルの手を掴もうとした所で、彼の表情が一変する。 「シカマル…?」 それにはさすがのナルトも気がついた様で、首を傾げながらぱちくりと瞬きをした。 「どうしたってば?」 シカマルはゆっくりと窓を指差す。 「え…なに?」 促される様にして振り返って思わず目が点になる。ナルトの視界には、窓の外で手を振るカカシが映っていたのだ。 「ええええ――――――――― っ!?」 「うるせえって…」 「な…どうして、ってかなんで?」 「聞きてえの、俺の方」 カカシはコンコンと窓をノックする。そして、鍵を指差してジェスチャーで開けろと指示していた。 「マジ開けたくねえ」 ぽそりと呟いたナルトはむっとしながらもベッドに近づいて行くと、鍵を開けた。ガラリと開けた窓の向こうでは機嫌良さそうなカカシがナルトの頭をがしがしと撫でまわした。 「あら〜機嫌悪そうだねぇ…」 「…カカシ先生、たまにはまともに来たらどうだってばよ」 「ん〜…なんか窓からの方がしっくりくるって言うか、なんでだろうね〜。ま、細かい事気にしないのがイチバンでしょ」 心の中で悪態をつきながら、さっさとカカシの用事を済ませてしまおうとナルトは渋々口を開く。 「んで?何の用だってばよ。今日は、オレ休みなんだけど!」 「なになに〜?先生、いきなり来たら邪魔みたいな感じ?ひっどいなぁ…ナルトは」 「う…あの、邪魔とかの問題じゃなくってさ。オレってば、これからシカマルと出かける予定なんだってば。用事があるならさっさと…――――」 カカシの表情がひょうひょうとしたものから真剣な雰囲気に変わる。その変化にナルトも緊張してしまった。 「カカシ先生?」 「お楽しみのトコ悪いんだけどねぇ。任務だよ、任務!さあ、今日もはりきっていこ〜!」 「へ?」 ナルトは間抜けな返事を返してしまった。頭の中で反芻されたカカシの科白を理解するまでに数秒を要する。 「任務って…休み……」 「急な任務で休みがずれる事もあるって事だよ。ナルトは好きデショ〜?任務?」 ナルトはうっと黙ってしまう。それから俯いて溜息をついた。眉間にシワを寄せながら振り返ると、苦笑したシカマルと視線が合う。 「任務だろ?…しゃーねえって。また今度にしようぜ、メシ」 「…―――――――― うん」 本当はとても嫌だ。嫌で嫌でしょうがない。せっかく昨日の今日でシカマルと時間を共有できると思っていた所にこのタイミングである。自分は何かに呪われているのだろうかと疑ってしまうくらいに、運命に逆らいたい気分になる。 「悪いねぇ…シカマル」 急かされる様に着替えを済ませているナルトの傍らで、シカマルの耳元にこっそり囁く。シカマルの頬がぴくりと反応した。それを見たカカシは吹き出したいのを必死に堪える。今の一言で勘の鋭いシカマルには全貌が見えた筈だ。 「ナルト捕獲完了〜!」 「カカシ先生…もしかしなくても、この展開は…」 「ん?や、よく分かんないけど面白いコトしてんでしょ?センセ―だけ除者にしちゃだめデショ。ちゃんと、年上には敬意を払いなさいな〜ってこと」 シカマルははっと笑うと、せっせと用意をしているナルトの背中を見つめて息を吐いた。 「…しゃーねえっすね。言いだしっぺってやつなんで」 「諦めの早いのも作戦のうちってやつ?」 「違いますよ。ンなんじゃねえっす…ただ」 「ただ?」 シカマルの言葉の続きを遮るようにナルトがやってくる。準備万端の彼は不機嫌そうだが、任務と言われたら文句が言えない事も十分に分かっている。 その頭をぽんっと撫ぜた。 「頑張れよ」 「シカマルもな〜」 ぺろりと舌を出したナルトが背中を向ける。来た時と同様に窓から出て行こうとするカカシを見て笑いながら、ひらひらと手を振った。太陽に煌めく、金色の髪。にっこりと笑った表情には起きた時に見た涙の跡はない。 シカマルもベストを羽織りながら、部屋から出る。そして、鍵をして階段を下りた。だが、そこに何故かあまり縁のない人物の姿を見つける。シカマルに気がついた彼女は慌てたように左右をキョロキョロ見渡した。 「どーしたんだよ、ヒナタ」 「お、おはよう。シカマルくん…あの」 ナルト相手ではない為かヒナタが卒倒してしまう事はなさそうだが、何か気になるのかその様子が挙動不審だ。 「ごめん、ちょっと待ってて」 ヒナタは丁寧に断ってから、耳元のスイッチを押す。 「こちら…C地点。シカマルくん捕獲完了しました」 ヒナタの言葉を聞いたシカマルは驚いたように目を見開く。それを見上げたヒナタが申し訳なさそうに笑みを見せる。 「サクラの言ってた作戦決行ってとこか?」 「うん…多分、そうかな?」 「悪りぃな。巻き込んでるみたいでよ。どうせ、いの辺りから言われたんだろ?」 ヒナタは首を振ると、頬を赤らめてもう一度にっこりと笑った。 「あのね、ナルトくん。喜んでくれるといいね。私も、シカマルくんと同じ気持ちだから」 「喜んでくれるといいんだけどな」 「だ、大丈夫だよ!」 必死になるヒナタが、慌てたように口を塞ぐ。余計な事を口にしたと勘違いしたのだろう。 「ま、いいわ。朝から御苦労なこったな。どうせ、俺にハレとか言われてんだろ?ヒナタ、朝メシ付き合えよ?」 「あの…私でいいのかな?」 シカマルにとっては誰でもいいのだが、彼女なりに何か遠慮しているのだろう。それに、こそこそと後ろから付いてこられるより堂々と見張られた方がいい。 「関係ね〜よ」 シカマルが背中を向けると、慌てたように後ろを来るヒナタの気配を感じた。
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ワンクッションの多い話だ(笑)
って事で、次回はウチのサスケさん登場の予定です!
さくさく更新したいのに、どうも無理っぽいとこが悲しいとこです〜(^^ゞ