医師 募集 絵本

 

 

 

act 4 

 

 

「ナルト!」

 シカマルが呼ぶ声にも、ナルトは振り返らない。思わず一歩が出かけた所で気の抜けた声が聞こえる。

「悪りぃ〜…任務長引いてよ」

 暗闇の中から現れたキバにシカマルは溜息をついた。

「どうした?」

「何も聞かないでよ、キバ。ほんと、あんた時間守りなさいよね」

 腕を組んで見上げるいのに、キバは申し訳なさそうに頭をかく。シカマルはむっつり黙ったままで、トレードマークになりつつある煙草を銜えて火を点けた。

「なんだよ、シカマル。なんかご機嫌斜めじゃん?」

「斜めねぇ…ま、そう言う言い方もあるかもしれないけど……運悪くナルトと会っちゃったのよ、今」

「…今?って!オイ。話聞かれたんじゃねえだろうな?」

「多分、…それはねえよ」

 シカマルはふうっと紫煙を吐き出した。話を聞かれたような顔ではなかった。夕方然り、今然りである。さける気はないのに、ナルトをさける形になっている。それでなくても、ナルトと共に過ごす時間が減っていると言うのに。夕方にナルトの顔を見た時から感じていた。精一杯に虚勢を張っているが、本当は違うと言う事を。

「ま、しょうがねえか」

「しょうがないじゃないでしょ?事の発端はシカマルからなんだから、最後まで責任持ちなさいよ」

「ナルトには黙って祝いてえってっただけだろ?」

「ナルトには内緒で、大仰に祝いたいんでしょ!」

「いや、そこまでは言ってねえし。普通でいいんだけど、お前がコト大きくしてんじゃねえの?」

 シカマルの科白にいのはむっと顔を歪める。

「ムカツク〜!もう、皆巻き込んでんだから。下がれないわよっ!!」

 いのの言う皆が誰にあたるのか、シカマルは苦笑してしまう。確かに言いだしは自分なので、ここで匙を投げる訳にもいかず。

「どうでもいいけどよ…こんな所で立ち話もなんだろ?場所変えようぜ、場所」

「ちょっと、キバ!あんた待ちだったってこと忘れてんじゃないわよ」

「だから、悪りぃって言ってんじゃん」

 言い合いを続けるキバといのを尻目に、シカマルは空を仰ぐ。夜空にはぽっかりと丸い月が浮かんでいた。

「めんどくせえし…場所も近いから、俺んとこでいいだろ?行こうぜ」

「シカマル?」

「別に俺はどこでもかまわねえって」

 いのとキバは顔を見合わせる。颯爽と背中を向けたシカマルの後を追う。何故だかその背中が寂しく見えた。

 

 

 

「お邪魔します〜」

 いのの笑顔にヨシノもにっこりと笑う。

「いいのよ〜。ナルトくんの誕生日をお祝いする会なんでしょ?」

「おい、母ちゃん…微妙に間違ってる気がするんだけどよ」

「でもねぇ…」

 ヨシノは人数分のお茶と、月見団子を差し出した。

「なんか、ナルトくんの様子が変なのよね。元気がないって言うか……」

 気にしていた事を口にされて、シカマルの眉間にシワが寄る。

「おばさん、後チョウジとサクラも来る事になってるんですけど、お邪魔になりません?」

 いのの言葉にヨシノはにっこりと笑う。

「ええ、大丈夫よ。みんなで集まるなんて久し振りですもんね。結果的に、ナルトくんは帰った方がよかったわね〜…折角の計画が台無しになる所だったわ」

 その言葉にシカマルが反応する。

「母ちゃん、ナルトに余分な事言ってねえだろうな?」

「あら、失礼ね〜。言う訳ないでしょ?まさか、ウチで集まるとは思ってもみなかったって事よ。じゃあ、みんなゆっくりしていってね?」

 機嫌のよいヨシノの背中を見送ったシカマルは無意識に溜息をつく。

「おい、いの〜…なんで、母ちゃんまで知ってんだよ」

「どこで集まるのか迷ってたのよ。いつもの焼肉屋でもいいかなって思ってたんだけど、おばさんに是非家を使ってって押し切られちゃたんだ。ま、シカマルんちなら部屋も広いし気兼ねもいらないのは確かだし、最終的にはお願いしたのよね」

 いのの科白にシカマルは頭を抱えたくなる。ヨシノは…というか、ヨシノもシカクもこの計画に乗ったつもりなのだ。便乗してこようという魂胆が丸見えだ。

「なんか、コトがめんどくせえ方向に行ってる気がする……」

「よく言うぜ、シカマル。めんどくせえこと始めようとしたのはお前だろ〜」

 団子を頬張ったキバは、一つを赤丸にも与える。嬉しそうにそれを食す赤丸の頭を撫ぜたキバは、話しを元に戻すためにシカマルに向き合った。

「んで?シカマル的にはどうしてーんだ?」

「別に……普通でいいんだよ。大きな事するつもりはねえけど…」

「ナルトの喜ぶ顔が見れたらいいってか〜?は…マジでノロケばっかだな〜」

「キバ〜…もうそれはいいじゃない?とりあえず、ヨシノのおばさんに料理関係は頼んであるのよね。あとはメンバーの確認と……って、聞いてるの?シカマル!」

「ああ、聞いてる」

 本当はナルトの事が気になってしょうがない。結果的に、彼に嘘をついてしまっている事が気にかかる。ナルトも薄々それに気が付いているのではないかと言う危惧もある。暗闇の中で、無理に笑ったナルトの事が気になってしょうがない。明日が任務なのかと聞かれた事も。休みの前の日はナルトの元を訪れるのが常である。

「…ちっ」

 明日が任務だと言ってしまった手前、今更ナルトの元に行く事も可笑しい話だ。いつの間にか、チョウジやサクラも合流して、話だけは進んでいく。こうゆう事は女に頼むのが一番手っとり早い。計画を練ると言う事に関してはエキスパートなのだ。それに、お祭り好きのキバやチョウジが加わる事でバランス良く話が進んでいく。それなのに、シカマルの頭の中には最後に見たナルトの笑顔がちらつく。

「シカマル。とりあえず、カカシ先生とイルカ先生には私から話を通しておくわ。…シカマル?」

 サクラの胡乱な眼差しを受けたシカマルは、慌てたように煙草の先を灰皿に押し付ける。

「悪りぃな、サクラ。ナルトと同じ班で動き辛いだろうけど、頼むぜ」

「別に、それはいいけど。なんか、シカマルの方が疲れてるんじゃないの?」

「違う違う!サクラ〜…シカマルは疲れてるんじゃなくって、憑かれてんのよ」

「お!うまいねぇ…いの」

 キバがにししと笑うと、シカマルは反論もせずに思い溜息を吐いたのだ。とりあえず気分を変えるために立ち上がると、心配そうなチョウジが自分を見上げている。

「便所」

 短く言って襖を閉める。とぼとぼと長い縁側を歩いて、やっぱり空を見上げた。暗闇に浮かぶ丸い月が奇麗で、心のどこかで弱音が聞こえた。

「ったく…めんどくせぇよ」

 そう呟いてふと目の前に胡坐をかいて座る影を睨みつける。

「な〜に通り道塞いでんだよ、親父」

「うるせぇや。ガキのてめえには月を眺めて酒を飲む趣なんてわかんねえだろうがな〜」

 ひょうひょうとしたシカクが右手を上げる。その手には小さなおちょこが握られていた。シカマルは返事をする訳でもなくシカクの隣に座る。受け取ったおちょこにトクリトクリと注がれる酒。

「うめえぞ?」

「酌が親父だぜ?半減だろ」

 くいっと飲みほしたそれは辛口で、喉越しはすっきりしている。

「うめえだろ?」

「…ああ」

 そこには無駄な光源はない。なくても、大きな月に照らされているため、必要ない様な気がした。それに、お互いの表情が読めないくらいの方がちょうどいい。

「ナル坊がな〜」

 ナルトの名前が出て、シカマルは自分で注いだ酒をもう一度煽った。

「可愛い事いいやがんだ。おめぇが生まれた事に、感謝してるってな。俺にも母ちゃんにもありがとうだってよ……まったく、こんな奴のどこがいいのかわかんねぇが、あいつはいい奴だな」

「うるせえよ」

「お〜機嫌悪りぃなぁ。シカマルよ、あんまナル坊の事苛めんなよ?」

「…ンなつもりねえよ」

「まぁ、そんな事したら俺も母ちゃんも黙ってねえがよ〜…」

「口の減らない親父だな」

「うるせえ!てめえはその息子だ、ば〜か」

 シカマルはくすりと笑う。見上げた月は美しい。ナルトもこの月を見上げてそう感じてくれればいい。そう思いながら杯を床に置いた。

 

 

 

「…と、言う事で〜」

 シカマルが部屋に戻ると、さくさくと話は進んで居た様である。ちょっとご機嫌ないのに、思ってもいなかった事を通告される。

「ここが一番大事ってか要なのよ、シカマル!あんたの手にこの作戦が上手くいくかどうかかかってんのよっ!」

 興奮しているいのに、シカマルはぽかんと口を開ける。

「おい、チョウジ。いのに酒でも飲ませたのか?」

「めちゃくちゃ素だよ、素」

「テンション無駄に高く見えんのは俺の気の所為か?」

「聞いてんの?シカマル、すれ違い作戦よ。すれ違い作戦!」

「はぁ?」

 いのの話はこうである。ナルトの誕生日……というか大宴会までの間はナルトとの接触を少なくしろというものだった。

「感動に感動の上乗せってやつね。これはサクラやサイくんにも協力してもらって、シカマルとナルトの間を裂いて裂いて裂きまくる予定だから、そこんとこヨロシク☆」

 迷惑だと声を大にして言いたいのだが、いのもキバもサクラも期待の籠った瞳でシカマルを見上げる。唯一チョウジだけが少しだけ憐みの眼差しを向けている事が救いだ。

「無駄に一緒にいると、この作戦の感動が薄れるってもんじゃないの。それに、私たちには仕事もあるんだし…無理な話じゃないと思うのよね?」

 いのの人差し指がぴっとシカマルの鼻先に当てられる。

「シカマル、安心してよ。もちろん、ナルトのフォローはちゃんと私たちがするし」

 自分の世界の中に居るいのを窘めながら、サクラが笑顔を向けてきた。少しだけ、誰かにものを頼んだ事を後悔する。別に望んで居たのは感動の上乗せではないのに。

「…わかったかよ、シカマル」

「おい、キバ…もしかして夕方の事言ってんのか?」

「お前たちの爛れた愛を深めるための、俺たちの涙を飲んでの作戦だって」

「ってか、面白がってるだけだろうがっ!」

 自分を取り残して盛り上がる雰囲気に、シカマルは溜息をつく。

「今更、後戻りできないって言ったわよね。シカマル?」

 いのの脅す様な声色にシカマルはむすりと顔を歪める。

「最初からお前に頼んだのが間違いだった気ぃするわ」

「問答無用!!ってことで、決行は決まったからね〜」

 シカマルはどうすればいいのか、本当に悩んでしまう。目の前に居る乗り気の仲間が、どれだけの人を巻き込んで居るのかも不明なのだ。

「条件があんだけど…」

 ようやく口を開いたシカマルは、煙草に火を点けるとふうっと煙を吐き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作戦?ってか、どんどん事がシカマルとナルトを無視しで進んでる(笑)

おっかしいなぁ。

当初予定より、話ずれてます。大きくなってます。

ま、それは自分らしいのでOKかな。

終わりよければ全てよしなのです。結果オーライ♪