アンチエイジング

 

 

 

act 2

 

 

「おう、シカマル!元気そうじゃねえの」

 目の前に現れた悪戯仲間に、シカマルは片手を上げる事で応える。

「ま、それなりっつうか…元気もクソもねえよ」

「ははっ!お前のその淡々としたとこ、俺は好きだぜ〜」

「うるせえ。キバに言われても、嬉しくねえし」

 本当に嫌そうに応えるシカマルを見て、悪戯仲間事・キバは大袈裟に吹き出した。傍に寄り添っている赤丸はご機嫌な主人を見て首を傾げるばかりだ。

「なに、最近忙しい訳?」

「なんでだよ」

「いのから聞いたぜ」

 いのの名前が出てシカマルはぴくりと反応する。そして、眉間にシワをよせた。

「おい、他言無用っての…お前、分かってんのか?」

「他言っつうか、ナルトだろ?俺はそんなヘマしねえよ。一応、シノとヒナタにも声かけといたぜ?」

「それは、任せるけどよ」

「はいはいはい。わ〜ってるって!要はナルトにバレなきゃいい話だろ?」

 シカマルは無言だが、キバはその姿を見てにやりと笑う。

「ま、鈍感なあいつの事だから、な〜んも気が付かねえだろ?楽しみにしてっぜ!飲み会」

 少し意図が違うように感じるが、結果そうなる事は目に見えている。気の知れた仲間が寄り集まるのだから、最後はきっとどんちゃん騒ぎだ。

「チョウジから、シカマルが最近仕事詰まってるって聞いたからな」

「いつもの事だって。それなりだろ……まぁ、なんてえか、いのに任せっきりなのが現状なんだけどよ。最近、長期の任務が多くてな」

「なんだ〜?その吝かじゃねえみたいな感じ。ホントは全部仕切りてえってか?」

「違げーって」

「よく言うぜ。言葉と顔が別物だぜ?ほんっと、シカマルがいきなりマメになんだから、ナルトの影響力ってのもすげえな」

「うるせえよ!お前の言い方、いちいちカンに触るっつうか…」

 シカマルが苦々しく応えた所で、後ろから声がする。

「シカマル〜!キバ!」

 二人はくるりと振り返ると、お気楽口調の主を見つめた。手を振りながら近づいてくるナルトに、シカマルは笑みを浮かべる。

「任務明けか?」

「うん、そうなんだって!なぁ、これからメシ行かねえ?」

 誘われた所で、キバがシカマルに視線を向ける。シカマルは少し考えたようにしていた。久々に主人に会ったように尻尾を振るナルトに、シカマルの表情が優しく見える。

「世も末だな、こりゃ…」

「なんだって?キバ…」

 首を傾げるナルトにキバはにかっと笑う。

「悪りぃ、ナルト。シカマルとこれから任務の話があんだよ。俺ら」

「そっか…」

 見るからに落ち込んだ返事をしたナルトの視線は、シカマルに向けられている。シカマルは適当にキバに話を合わせる事に決めた。

「またにしようぜ、ナルト」

「あ…うん」

 しゅんとしたナルトの頭をシカマルが撫ぜる。キバは心の中でもう一度「世も末だ…」と呟いた。

 とぼとぼと歩くナルトの背中を見送ったシカマルが無意識の溜息をつく。

「なんだ〜?ナルトとメシに行きたかったってか?」

「上げ足取るんじゃねーよ、めんどくせえ」

「へ〜へ〜…悪うございました」

 キバはぺろりと舌を出す。シカマルはがしがしと頭を掻きながら、むすりと顔を歪めている。

「ポーカーフェイスもナルトん前じゃ崩れるってか?」

 けらけら笑ったキバを睨みつけてしまった。本当に最近はナルトの所へ行く機会が減っているのだ。食事でも(しかもキバ込み)と誘われて、少しは心が揺らいだ。それは確かな事である。

「あんま、ナルトん事甘やかすなよな〜。ま、それはあいつの誕生日まで取っとけばいいじゃん。感激のあまり、だだ泣きで喜ぶぜ〜…あいつ」

「ンで?何の打ち合わせだって?」

「気が早え〜な…あれは、お前たちの愛を深める為の、俺なりの気遣いっちゅうやつだろうが!気がつけよ、ンな事くれえよ〜」

「お前に気ぃ使われる筋合いねえだろ」

「なんだよ、マジ拗ねてんの?」

 キバとの会話は調子が狂う。歯に衣を着せない彼の言葉が、ずきりと胸に突き刺さった。なるべくナルトの元を訪ねる事にしているのだが、ここ数日はそれも侭ならないのだ。強がりを見せるナルトも、たまに甘えてくる事がある。堰を切ったように。ふと、そんな彼の事を心配してしまった。

「うるせえって」

「シカマルが盲目になることもあんだな〜…おもしれえ」

 キバの眼差しは言葉通り、完全に面白がっている節がある。シカマルは話を転換させる為に、顎をしゃくった。

「定食屋にでも行こうぜ」

「はいよ。俺も任務の時間あっから、そんなにゆっくりしてられねえけど?」

「別に構わねえよ。成り行きってやつだろ?それよりも、シノとヒナタの口止め、ぜってー忘れんなよ?」

「あんなぁ…あいつらは、無駄口は叩かねえ主義なんだよ。心配ご無用だぜ」

 キバとシカマルは、安くて上手いと評判の定食屋に足を向けたのだった。

 

 

 

 ナルトは気落ちしたまま、とぼとぼと歩く。

 シカマルの自分に対する態度はいつもとは変わらないと思う。思うのだが、彼の任務の都合と自分の任務の都合で、すれ違いの毎日だ。たった、数日。されど、数日。いくら忙しくても、顔くらい見せてくれるシカマルの足が最近遠のいているような気がしていた。

「オレの…考え過ぎだよな」

 自分に言い聞かせる言葉。少ない時間でも、僅かな触れ合いでも、シカマルがいつも自分を構ってくれている事が当たり前になっていた。シカマルの誕生日を二人で祝ってから、数日しか経っていない。ナルトの希望通り、二人だけの濃密な時間を過ごした。満たされているはずなのに、心の中に急に湧きあがった感情はなんだろうか。

「オレってば…欲張りになってんかな〜」

 独り言を呟いた所で懐かしい声が名前を呼び、振り返った。

「やっぱり、ナルトくんだわ〜。どうしたの?なんか元気ないわね?」

「ヨシノのおばちゃん…」

 ナルトは久し振りに顔をみるヨシノに、ニカリと笑う。そして、ふと思いついた事を口にした。

「あのさ、シカマルって最近……忙しくしてるってばよ?」

 ヨシノは首を傾げる。ナルトの声に覇気がない。にっこりと微笑むと、ナルトの手を取った。

「そうねぇ…あの子は任務の事はあんまり口にしないでしょう?もう大人だし、私もそれに口を出していないの。でも、明日は確かお休みなんだじゃなかったかしら?」

「え…非番、なんだってば?」

「そのはずだけど?」

 ヨシノの科白にナルトの顔つきが渋くなる。キバと任務の話があるからと、食事を断られた。急を要する事だったのかもしれない。だが、休みの日の前には自分の所へ足を運んでくれていたはずなのに……ナルトは急に寂しい気持ちになった。落ち込んだように見えるナルトの手を取ったヨシノは、彼の手をひく。

「これから夕飯のお買いものなのよ?ナルトくん、付き合ってくれるかしら。もちろん、夕飯にもね?」

 ナルトの食生活を心配してくれるのはシカマルと同じだ。奈良家の当主のシカクもヨシノも、大変非常にナルトを可愛がってくれる。

「有難くお邪魔するってばよ!」

 大雑把だが礼儀を弁えているナルトは、ヨシノからしても好感が持てる。息子よりも素直で可愛く感じてしまうナルトの事を非常に気に入っているのだ。

「腕によりを掛けなくっちゃね〜」

 嬉しそうに笑ったヨシノの後について歩く。ナルトは思わず振り返った。シカマルとキバの姿はもうない。ぽっかりと胸の中に穴が開いてしまったような空虚感。

 すれ違いなんていつもの事なのに、ナルトの中でなにか寂しい気持ちが生まれたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

微妙にすれ違い(^^

これも、ナル誕への布石っす〜。

ヨシノママ登場〜!キバも登場〜!

奈良家登場は楽しい嬉しいっす。面白いよな〜

パパとママはナルトにアマアマですから(笑)