|
act 1
人ごみを歩きながらふと顔を上げたシカマルは思わず、眉間にしわを寄せる。 「…あ」 間抜けな声を出してしまったと感じた。もちろん、少し離れた所にいた彼女もシカマルの存在に気が付いたようである。 「シカマルじゃない〜」 こうなっては無視して行く事は出来ない。後々面倒な事にもなる。小走りに自分の元に駆けてきたいのは、珍しくにっこりと笑う。 「なにやってんだよ、いの…」 「なにって、手伝いよ〜手伝い。今日は配達を頼まれちゃってさ」 「へぇ…まだ店の手伝いやってんなんて感心だな、お前。じゃ…」 適当な事を言って脇をすり抜けようとしたシカマルの腕に、いのの手がかかる。掴まれた腕を恨めしげに見つめてから、いのに視線を移す。 「…ンダよ?」 「ちょっと、つれないじゃないの。シカマルこそ、こんなとこで何してんのよ?」 「報告書、火影様んトコに出してきたから帰るとこ」 いのはにんまりと笑う。 「シカマルの家、あっちじゃない」 いのの手はシカマルの右に向けられる。 「めんどくせえな、ナルトんとこ行くんだよ」 「へええ〜?ナルトんちはこっちじゃない?」 そして、いのの手は左に向けられた。女と言う生き物はいくつになろうとも、詮索好きである。しかも、妙な勘が鋭い。シカマルにとっては邪魔になるソレを十二分に発揮する生き物なのだ。 成り行き上、なぜかシカマルはいのと一緒に公園のベンチに座っていた。とりとめのない話は尽きる事はない。長い付き合いなのだし、いのとは男とか女とかの性別を超えて気軽に付き合える仲間という関係である事も曲げ様のない事実なのだ。 「悪りぃ…煙草、いいか?」 そのつもりで、灰皿のあるベンチに腰を掛けたのだ。 「気持ち悪い事聞かないでよね。私の肺はアスマ先生とシカマルの副流煙で真っ黒だっての!」 「……めんどくせえな」 煙草をしまおうとしたシカマルにいのはくすりと笑った。 「冗談よ、冗談。別に気にしてないし、断ってから吸うんだからアスマ先生よりいいんじゃない?」 「比べるとこソコかよ!」 「いちいちうるさいわね〜。税金払ってんだから、堂々と吸えばいいのよ。歩き煙草してる訳じゃなし、ここには灰皿もあるんだから、公共の喫煙所じゃないの?」 シカマルはふっと笑うと、ふうっと紫煙を吐き出した。 「いの」 顔を上げたいのに、小銭を渡す。 「悪りぃけど、缶ジュースな?」 「やだぁ!気を使わなくていいのに……シカマルはコーヒー?」 いのの背中を見送り、シカマルは溜息をつく。十分に気を使えと言う態度を示しておきながら、なんてふてぶてしい生き物なんだと思う。気飾らない性格は好ましいものなのだけれど、思わず苦笑してしまう。チョウジといのと自分。長い間、三人でスリーマンセルを組んでいた事もあり、言葉にしなくても何となく通じてしまう節があるのだ。だから、さっさとこの場を退散したい気持ちもあるのだが。 いのから缶コーヒーをもらう。もちろん彼女は再びシカマルの隣に腰を落ちつけた。 「それで?どうしたのよ、用事もないのにわざわざ散歩するタイプじゃないでしょ、シカマルは」 その口調が意外に柔らかくて、シカマルは眉を上げる。 「関係ねえだろ?」 「関係ないけど、気になるから聞いてんのよ」 聞いてほしくないとは言えない。癇癪を起した彼女がどれだけ面倒臭いか知っている。 「…他言すんなよ」 「人をスピーカーみたいに言わないでくれる?」 「女は人の噂話とか無駄に話すの好きだろうが」 「……否定はしないけど、なんかムカツク」 彼女はケラケラと笑った。むかつくと言いながらも、ご機嫌ないのにシカマルは首を傾げるばかりだ。 「ケーキ買いに来た」 「ケーキ?」 シカマルの答えはいのにとって意外なものだったらしい。 「なんで?」 「ナルトが食いたいんだってよ」 「なによ〜…さり気なく、のろけ?」 「ンなんじゃねえし…」 缶コーヒーに口をつけたシカマルは、煙草の火を消す。いのは紅茶を飲みながら、にんまりと笑った。 「あんたが意味のない事で動かないって事は知ってるって言ってるでしょ?」 「だから、女はめんどくせぇんだよ」 「ナルトって、今朝には木の葉に戻ってきたでしょ。サクラに会ったから聞いたのよ。あのバカの所為で宿場に泊まり損ねたってね〜…それで、ナルトはなにしてんのよ?」 情報源がサクラと言う事もあり、いのの言う事は外れていない。シカマルはどうしようかと考えながら、再び煙草に火を点ける。 「寝てる」 「……あっそ。やっぱり、ノロケじゃないの」 何も言い返せないままシカマルは煙を吐き出した。そして、ふっと思いついた事を言葉にしてしまう。 「いの、お前って誕生日とか拘るか?」 「女の子はね、誕生日も記念日も拘る生き物って奴よ」 不敵に笑われて、肩をすくめた。 「でもさ、シカマル。女の子じゃなくっても、好きな人の生まれた日は大切な日なんじゃない?だからナルトは早く里に戻ってきたかったんじゃないの?サクラから聞いて、ぴ〜んときちゃったのよねぇ。いのちゃんは!」 やっぱり、勘の鋭い生き物だ。シカマルは辟易しながら、いのの話の続きを聞く。 「なんてね、一般論。シカマルには理解不能?」 「そうとも思わねえけど……」 「な、なによ」 シカマルから返事が返ってくるとは思わなかったいのは少し驚いたように顔を上げる。 「今更っつうか…なんで今年に限ってそんなに拘るのか分かんねえからよ」 「あんたたち、付き合い長いもんねぇ」 くすりと笑ったいのは、空を見上げる。その横顔をシカマルはちらりと盗み見た。 「いの、頼みたいことあんだけどよ…」 シカマルの珍しく真剣な顔を見たいのは、目を丸くさせながらその話を聞く。そして、聞き終わってから大爆笑したのだ。 「人が真面目に話してんのに……」 「真面目だから笑っちゃうっての!わかったわかった〜…ま、このいのちゃんに任せないさい。いいんじゃないの〜?たまにはこうゆうのも」 「なんか含んでるように感じるのは俺の気のせいか?」 「うるさいわねぇ…ナルトの誕生日を内緒でお祝いしたいんでしょ?別に、そんなの簡単よ。サクラとも連絡とってみるし。もちろん、サイくんにも〜」 「いの、語尾にハートマーク付いてねえか?合コンじゃねえぞ?」 その科白にいのはぎろりとシカマルを睨みつける。 「多少の得もないと動けない生き物なのよ、女の子は!」 力強く宣言されてしまい、シカマルは力なく笑みを浮かべる。彼女に頼んだのは良かったのか悪かったのか……多大に迷ってしまう。それから、思い出したように忍具の入ったポーチをごそごそやると、小さな小瓶をいのに渡した。 「お前、これ欲しいとか言ってたよな?」 「やだ!覚えててくれたの〜?サンキュ」 たまたま今回の任務先の話をしたら、いのにその国でしか買えないトリートメントを買ってくるように頼まれたのだ。半分脅しも入っていた事はこの際目を瞑ろう。 「期待してなかったから、めちゃ嬉しいじゃないの〜。いくらだった?」 「いらねえよ」 シカマルは立ち上がると空になった缶をゴミ箱に放り投げる。 「お前とも付き合い長げーからな」 シカマルの言葉にいのは口元に笑みを乗せる。 「照れてないで、おめでとうくらい言えないの?」 「女に年の話はタブーなんじゃねえの?」 「バカねぇ…誕生日はベツモノなのよ」 「腹減るとあいつうるせえから、行くわ」 軽く手を上げたシカマルはいのに背中を向ける。ポケットに両手をつっこみながら、たらたら歩く背中はいのが知っているシカマルそのものである。 「やっぱ、ノロケじゃん」 手の中の小瓶を見つめたいのは、くすりと笑うとシカマルとは反対方向に歩きだす。シカマルからされた話は意外だった。ナルトの誕生日を祝うならば、二人きりでどうぞご勝手にという感じなのだが、シカマルは違うらしい。なるべく仲間を集めて、びっくりパーティを開きたいらしい。最近では忙しい仲間の同窓会のような気もしてしまうのだが、それでシカマルが納得しているならそれでいい。 「しょうがない!一肌脱いでやるか〜」 いのは拳を空に向かって突き出す。そして、機嫌よさそうな足取りで帰宅したのだった。
|
シカマルがナルトの誕生日をお祝いする道のりが、この話なのです。
それが、シカナル誕生祭?
うん、そうなんです(笑)
当初予定は23日にアップしたかった話。いのちゃんの誕生日だから(^^ゞ
「シカいの」ではないですよ〜!シカといのは、なんだろ…?男とか女とかじゃない付き合いが好きなので。
んでもって、いのとナルトがじゃれあうのはもっと好きなのです。
ってか、ナルトキャラの中で誕生日を覚えてるキャラの一人がいの。だってシカマルの次の日なんだもん(笑)
あとは…覚えられません!