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Report

 

 

 そこは夕日の入りこむ、とある部屋。

 火影の執務室のある同じ建物で、いくつもの休憩室や忍たちが待機する為に用意された部屋の一つだと言ってもいいだろう。

 机の上にとんとんと鉛筆を打ち付けたシカマルは、真剣になってレポート用紙に向かっていた。少し考える様にしてから、さらさらと白紙の紙の上を滑る筆先。鉛筆を持って動かすのも面倒臭くて、アカデミー時代の成績は地を這うものだった彼には珍しく、本当に珍しくその作業に没頭していた。

 それは、シカマル的「目の上のタンコブ」をどうにかする為の作業なのである。気を抜く事は許されないし、目の上のタンコブ事…海野イルカの目は教師の鏡と言えるほどに鋭い。今まで、何百ものレポートを目にしてきた彼だ。いい加減なモノは提出できない。

 溜息をつきたいのを我慢しながら、シカマルは鉛筆を机の上に置いた。

 

――― ガラリ。

 

「あっれ〜?シカマル、一人?」

 飄々とした態度で部屋の中に入ってきた彼は、彼特有の笑みを(多分)浮かべている。顔の殆どが覆われているので、その表情を読むには額あてで隠されていない右目の動きだけだ。

「誰かと待ち合わせっすか?」

 ナルトは目の前の彼が担当上忍となる小隊の一員である。その男、名をはたけカカシと言う。やる気がなさそうに見えて、実はかなりの実力者。それを見せつけられてきたシカマルは嫌と言うほど彼の性格を分かっている。それも、多分なのだが。

「アスマとね〜…待ち合わせしたんだけど?俺とした事があいつより早く着いちゃうなんて…なぁんか悔しい感じだなぁ」

 遅刻常習犯であるカカシは本当に残念そうに溜息をつく。シカマルはそれを見て、思わず乾いた笑みを浮かべた。

「たまにはいいんじゃないっすかね…」

 カカシはふとシカマルに目を向けた。シカマルと、その机の上にだ。

「なに、報告書?」

「ンなもん…みたいな感じっすかね」

「報告書なんて家でやりゃいいでしょうが。そんなに急を要するもんなの?」

 シカマルは軽く首を振った。

「いや、違いますよ。前の任務の報告書は火影様に提出しましたしね……ま、これはなんて〜か、ここでやるのが一番効率いいレポートなんで」

 書き終わればすぐにイルカに提出する事が出来る。だからこそ、この場所を選んだのだ。

「ふ〜ん…マ、俺には関係ないけどねぇ」

 あははと笑うカカシは本当に興味がないのか、鼻歌を歌いながらシカマルの近くの席に腰を下ろした。そして、気が付いた様にシカマルに話しかける。

「そういや…シカマル。中忍昇進オメデト!」

 取ってつけた様な文句にシカマルは一応頭を下げた。

「頑張って、上忍目指しなさないな」

 シカマルは嫌そうに顔を歪めた。はっきり言って御免だ。中忍昇格にもびっくり驚き状態なのである。それに、最初に任せられたサスケ奪還任務は見事失敗。自分には忍としての才能がないのではないかと思い知らされた。

「俺には向いてないっすよ」

 恐縮したのでもなんでもなく、本当にそう思う。今でも、自分が小隊を率いる隊長クラスなのだと言う事が信じられないのだ。

「ん〜?またまたぁ…いつものめんどくせえ〜ってやつか?アスマはいつもそれで泣いてるよ〜。恩師に報いる為にも頑張んなさいな」

 カカシの言葉は、どうしても気持ちの入っていないモノに聞こえてしまうのは自分の考えすぎなのだろうか……シカマルは、とりあえず返事を返さない。だが、ふとした疑問が頭の中に浮かび上がった。

「カカシ先生、額とかそーゆうのどうでもいいんすけど…やっぱ中忍よりも上忍の方が給料っていいもんなんすか…?」

「は?……ん、まぁ危険任務も多いし〜ソレ系の手当ても付くデショ?そりゃ、上忍の方が高給取りじゃない?いちいち口座確認までしてないからねぇ」

 首を傾げたカカシは「なんで?」と言葉を続けた。

「俺的に…色々あるんすよ」

「色々ねぇ……って事は、ナルト絡み?」

 シカマルはぎくりとカカシを見上げる。彼は嬉しそうに「ふふふ…」と笑った。

「なになに〜当たりぃ?超ビンゴ?シカマル、分かりやすいねぇ」

「………」

 からかわれてムッとしたシカマルは、再び鉛筆を手にする。こんな事で貴重な時間が割かれる訳にはいかない。自分的には今日中にはこのレポートをイルカに提出したいのだ。

「ナルトって……よくよく考えんと、イルカ先生に似てんすよねぇ…」

 独り言の様に呟いたシカマルの科白にカカシは大袈裟に反応した。

「…え?どこ?ソレ…どこかに売ってるとか、ソレ系?」

「カカシ先生、支離滅裂なんすけど?」

「いや…なんてえかね……素直に驚いちゃったよ。うん」

「俺の正確な分析を元にする結果っすよ。いいっすか?まず…」

 シカマルの言葉に、意外と真剣なカカシはうんうんと頷いた。

「あんな馬鹿が付くくらい…ってか、付いてるお人好しはあんまいねえっすよ。だから、すぐに人に騙される。泣き上戸で人に感化され易いから身の上話、セールスには滅法弱いときてる。その上、頑固だから一度決めた事を曲げようとしねえし…あいつ、絶対クーリングオフとか知らなそうだし…」

 シカマルは呆れた様に溜息をついた。何度もそれ関係で骨を折って来たのだ。その事を思い出すと気が重たくなった。

「そんでもって、傷つきやすい癖に人懐っこい性格してんでしょ?喜怒哀楽が激しくて……でも、あいつの笑顔見せられると、なんてえか…弱いんすよね、俺」

「ほ〜…」

 カカシは感心してシカマルを見つめてしまう。彼の分析は的を得ている。

「いやあ…マジで感心しちゃうねぇ」

「ども」

「そうなんだよね〜。ああ、うざいな…とか思う任務でも、イルカに頑張ってくださいとか言われちゃうと、なんかやっちゃうんだよねぇ…そっか、あの笑顔が曲者だった訳だ」

 シカマルがくすりと笑った。

「俺は火影様がイルカ先生を隣に座らせてるのは、作戦だと思いますよ?」

「俺とした事が!!……なんか、悔しくなってきたかも」

 地団太を踏む勢いのカカシにシカマルは肩をすくめた。

「イルカ先生の趣味が湯治って知ってます?その影響かナルトも風呂好きで……ま、一番の影響力は食べ物の趣向か…」

 カカシがシカマルを振り返った。シカマルもにやりと笑う。

「「一楽!」」

 二人の声が見事に重なった。

「一楽バカ!いや…あそこまで行くと、一楽オタク。あの情熱は馬鹿にしてると、俺もやられそうだから結構真剣なんすよね」

 うんうんと頷くシカマルに、カカシは頭を捻った。

「あのさ……シカマル、一体何の報告書やってんのよ」

「報告書じゃないっすよ。なんてえか…イルカから出された課題みたいなもんっす」

「………何の?」

「ナルトを俺の嫁にする為に踏む手順みたいなもんって言えばいいんすかね…あの人、ナルトの父親役買ってるから、結構うるさいんすよ」

「ええええ ―――――――――― っ!!なに、なにソレっ」

「う…煩いっすけど!」

「じゃ、俺がナルトの母親役ってのはどう?」

「却下…させてくださいよ。マジで。めんどくせえんですから…」

 シカマルはレポート用紙にエンドマークを付けて立ち上がった。結構な枚数のある分厚い束を見て、カカシは驚いてしまう。

「聞きたくないけど、やっぱ聞きたいから聞くけど…」

「どっちなんすか…」

「じゃ、聞く。なによ、ソレ」

 カカシは紙の束を指差していた。

「だから、レポートっすよ。ナルトについてと、一楽についての…俺なり解析と分析を加えた論文。ナルトの事観察してて、あいつとイルカの共通点に気が付いたってか…ま、別にイルカの事知りたい訳だったんじゃないんすけど」

「え……。 一楽とナルトだけで、その量?」

 驚きと言うより半ば呆れに近い呟きにシカマルは不敵な笑みを見せた。

「俺がどんだけ一楽に通ったと思ってんすか?ま、その度にナルトを誘いましたから、デートついでみたいなもんすけどねぇ。スープ毎に麺の種類が違うし、その茹で加減も微妙に違ってくる。具の乗せ方、出てくるタイミング。茹で卵の硬さ具合。結構、楽しかったっすよ」

 にこりと笑うシカマルは、一仕事終えた達成感を背負っている様にカカシの目には映る。

「へ、へぇ……」

 これくらいのやる気をアスマに見せてやれば、彼も泣いて喜ぶだろう事は敢えて口にしない。

「やっと、これで最後。イルカの奴に何も言わせるつもりはないですから」

「さ…サイゴ?」

 その嫌な響きにカカシは胡乱な視線をシカマルに向けた。

「提出物の事っす」

「て…テイシュツブツ?」

 何故か、聞きたくないのに聞かずにはいられない。カカシの言葉に鼻の頭をちょいっと掻いたシカマルはまくし立てる様に言葉を続けた。

「給料の明細書の映し、現在の貯金額、ナルトとの将来の家族計画」

「か…か…家族計画ぅ?」

 カカシの素っ頓狂な声にシカマルは、めんどくさそうに溜息をついた。

「なんすか…先生」

「いや、驚いて…」

「家族計画っても、俺には最初から譲れねえ人生計画ありますから結構簡単ですって。ま、ナルトと結婚して子供は二人。一人目は女の子で次が男。長女が結婚して、長男が一人立ちしたら俺は忍を引退して…縁側で碁や将棋をしながらお気楽に生きてく……って事になってますんで」

「いや…お前、どこか激しく間違ってるから!!」

 思わず声を大にして叫ぶカカシに、シカマルはしたり顔を見せる。

「いいんすよ、先生。要は筋を通すって事に意義があんですから」

 にやりと笑ったシカマルは余裕な表情でカカシに背を向けた。そして思い出したように振り返る。

「もちろん、ウチの両親の承諾書ももらってますんで。ご心配なく」

 そのまま部屋を去るシカマルに、カカシは呆然と立ちつくしかなかった。そして、彼と入れ替わる様にアスマがのんびりと入ってくる。

「悪りぃ、悪りぃ……カカシ?」

 カカシはアスマの顔を見て、盛大な溜息をついた。そして、アスマの肩にぽんと手を置く。

「いやぁ…うちの班も抜け忍やらなんやらで大変だと思ってたけど、お前には負けるよ。アスマ」

「……真剣な顔して言うな!気持ち悪い……」

「ホラ、話しちゃうと今夜もお前のやけ酒に付き合わされそうだし…多くを語るのはやめるわ」

「………さっき、シカマルとすれ違ったんだが」

「気にするな!」

「――――― 気になるだろ?!」

「いやぁ…シカマルって面白い男だなぁと」

 アスマはくすりと笑うと、煙草の先に火を付ける。

「そりゃ、アイツはうちの班の有望株だからな。IQ200以上の超が付くほどの天才で、将来が楽しみで………って。おい、カカシ。その俺を見る憐みの目はなんだっ!」

「やっぱ、教え子の祝儀って奮発しちゃうよねぇ。お前も焼き肉屋のツケは清算して貯金しろってな。それに、ここ禁煙だからちゃんと喫煙所いきなさいな」

 アスマは訳が分からないと言う様に、首を傾げた。

 

 夕日に映える煙草の煙が二人の間に空しく上がっている。

カカシはアスマを居酒屋にでも誘ってやろうと心に決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サイトのキリ番8888をゲットした都坂さまのリクエストです。

……とても、とてもですね。

丁寧に頂いたリクエスト内容だったのですが。

多分RUIが激しくぶち壊してます。

変なシカマルにしちゃってごめんなさい!!

シカナルなんです!これでも。

登場人物がカカシ先生とアスマ先生とシカマルしかいませんが!!

そして、うちのシカマルはとても真剣()

都坂さま…「策士なシカマル」は書けなくてごめんなさい(-_-;)